仮想通貨におけるブロックチェーンの定義とは?

仮想通貨について語るときには、ブロックチェーンは避けて通れない技術です。2008年にかかれたサトシナカモトの論文『bitcoin : a peer-to-peer electronic cash system(ビットコイン:P2P電子マネーシステム)』も、このブロックチェーンを用いて、電子決済をすることで、中央の管理者を必要としない決済システムを実現できる、という趣旨でした。この論文をもとにして、世界中の技術者が作り上げたのが現在のビットコインシステムです。この記事では、ブロックチェーンの定義と可能性についてまとめます。

ブロックチェーンの定義

・ピザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ
・電子署名とハッシュポインタを使用した改竄検出が容易なデータ構造を持ち、かつ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及び同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ

以上が日本ブロックチェーン協会(JBA)によるブロックチェーンの定義です。仮想通貨やブロックチェーンの概念は2008年に論文で発表されたばかりであり、はっきりした定義があるわけではありません。辞書にも載っていませんが、日本ブロックチェーン協会では、以上のように定義しています。
では、ブロックチェーンの定義を紐解いていきましょう。

ビザンチン将軍問題

ビザンチン将軍問題とは、不特定多数の参加者がいて、正常に機能しないあるいは裏切るような参加者がいる場合にどのように、システム全体の正常性を担保するか、という問題です。このような状態で、起こる障害をビザンチン障害といいます。

ビザンチン帝国とは、ご存知の方もいるでしょうが4世紀から5世紀ごろの東ローマ帝国のことです。ビザンチン帝国の複数人の将軍部隊がが、敵国コンスタンティノープルの拠点を取り囲みました。当時は通信機器などないので、それぞれの部隊への通達は伝令を用いて行います。ところが、この将軍の中にはひょっとすると裏切り者がいるかもしれません。すると、次のような問題が起こります。例えば、5人の将軍がいて2部隊が「全軍突撃」、2部隊が「全軍撤退」の多数決の意見を出したとします。残りの1人の将軍が裏切り者だった場合、突撃の2部隊には突撃に決定されたと伝令を出し、撤退の2部隊には撤退の伝令を出したとすると、2部隊だけが突撃して、致命的な打撃を受けるでしょう。

このような状況で、全体の正常性をどうやって保証するかという問題をビザンチン将軍問題といいます。

ブロックチェーンの定義と可能性

ブロックチェーン定義を簡単に言い換えると、次のようになるでしょう。

誠実でない参加者がいるかもしれないし、コンピューターの生涯により正常に動作しない参加者がいるかもしれない状態でも、システムは問題なく動作し、暗号技術により分散してデータを保有しているため改ざんに強く、システムダウンを起こさないようなデータ構造をもつ。また、全体で得られた合意は、時間が経った後誰であっても覆せない。

このような特徴があるために、非常に注目されているのです。システムダウンをしないというだけで、非常に有用なシステムであることがわかると思います。さらに、不特定多数のコンピュータで管理し、中央となるサーバーが存在しません。管理者不在で金銭のやり取りができるシステムなのです。従来では、決済をするときに金融機関など信頼できる第三者が必要でした。それが必要なくなるのです。

おわりに

ブロックチェーンの応用分野は金融だけではありません。さまざまな組織運営を変える可能性を秘めています。例えば、(結局は失敗しましたが)イーサリアム上で運営された「The DAO」は、投資ファンドを経営者なしに運用する試みでした。成功すれば、経営者なしでも会社運営ができる、という一例になっていたはずです。

 
執筆者 西村大樹