2020年5月、仮想通貨が呼称変更され、仮想通貨が資産としての価値が認められるようになりました。
そこで気になるのが“相続に関する問題”ではないでしょうか。
「株券や銀行預金は相続されるのはわかるけれど、暗号資産はどうなの?」と疑問に思っている方も少なくないはず。そこで今回は暗号資産の相続について解説します。
参考記事はこちら
https://bitcastle.io/column/post-17582/
暗号資産は相続できるの?
ではいきなり本題です。暗号資産は相続できるのか?結論から言えば暗号資産は相続できます。
暗号資産は2020年5月に仮想通貨から暗号資産へと呼称変更されました。
この変更は、資金決済法や金融商品取引法の改正法が国会で可決成立したことがきっかけとなっており、金融商品取引法、及び資金決済に関する法律改正で呼称が「仮想通貨」から「暗号資産」に統一されました。
つまり、仮想通貨は暗号資産として法的に認められた財産になったというわけです。
暗号資産が財産として取り扱われるとなると、相続には相続法と呼ばれる民法が適用されます。そのため元の所有者が亡くなってしまった場合、親族や配偶者に暗号資産相続の権利が与えられます。
相続できる暗号資産の種類は?
相続できる暗号資産の種類は、基本的に市場で取引されている銘柄すべてです。ビットコインやイーサリアム、リップルなどはすべて相続の対象となり、複数銘柄を保有していたとしてもすべて相続できます。
仮に一般的な取引所に上場しておらず、DEX(分散型取引所)でしか流通していない銘柄であっても相続は可能です。
相続の分配方法
相続人が複数いた場合、遺言状などの条件が無ければ、暗号資産の分配方法は“法定相続分”の割合に従います。
法定相続分とは、法定相続人に対して、遺産を分配する割合のことで以下のように分配されます。
相続人が配偶者のみの場合 | すべての遺産を配偶者が相続 |
相続人が配偶者と子供1人の場合 | 遺産の50%が配偶者、残り50%が子供 |
相続人が配偶者と子供複数人の場合 | 遺産の50%が配偶者、残りの50%を子供たちで均等に分割 |
被相続人(遺産を残した人)に配偶者がおらず、相続人が子供たちだけの場合 | 子供たちで均等に分配 |
被相続人が独身だった場合 | 被相続人の両親で分配 |
被相続人が独身、かつ両親が死亡し、兄弟がいた場合 | 被相続人の兄弟で分配 |
法定相続分には遺産を相続できる想定相続人に順位があり、それを相続順位と言います。遺産相続は相続順位に従って分割されるので、自分より上位の相続者がいた場合は相続の権利はありません。
相続順位の具体例
基本的に配偶者は常に法定相続人となり、その子供たちが相続順位1位として次の相続順位となります。また、法定相続人は血縁関係のある親族を対象とするので、例えば相続順位1位の配偶者、つまり被相続人の子供の結婚相手には、遺産を相続する権利はありません。
しかし被相続人の子供は死亡しているが、その子供がいた場合(被相続人の孫がいた場合)その孫は相続順位1位となります。
この様に相続順位は世代が進むにつれ判定が難しくなっていきます。遺産相続の分配がよくわからない方は専門家への相談が一番いいでしょう
遺言状や遺産分割協議会を開いた場合
もし被相続人が生前遺言状を残していたり、相続人全員が集まって遺産分割の話し合いをする遺産分割協議会を開いた場合、相続方法はそこで決まった内容としても問題ありません。
この場合遺言状は、法的な効力があるもの、遺産分割協議会が開かれた場合は法定相続人全員の同意など必要な書面を用意する必要があるので、この場合も専門家への相談が必須です。
参考記事はこちら
https://bitcastle.io/column/post-17798/
暗号資産相続には相続税が発生する?
暗号資産は相続できます。相続できると言うことは、もちろん相続税も発生します。被相続人が大量にビットコインを持っていた場合、その評価額は相当なものでしょう。
相続時に発生する相続税は、損益ではなく評価額によって発生します。仮に、相続する方が取得時の額面を知っていて、「現在の評価額では取得額に対して赤字だから相続税は発生しないだろう」と考えているとそれは大きな勘違いです。
暗号資産を相続する場合は、相続する銘柄すべての資産の評価額を合計して、それから相続税を計算しましょう。
暗号資産の相続税はいくら?
暗号資産の相続税は、暗号資産単体では計算できません。相続によって発生する税金はあくまで被相続人の総資産から算出されます。
仮に財産が暗号資産だけだった場合の相続税
仮に被相続人の財産が暗号資産だけだった場合、相続税の計算は“相続税の税率”で計算できます。
国税庁が公開している相続税率の一覧表によれば、相続した金額に対する相続税は以下のように定められています。
法定相続で取得した金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円を超える | 55% | 7,200万円 |
相続した金額が2,500万円だったとすると3,000万円以下の税区分に当てはまり、控除が50万円で計算できます。
計算してみると「2500万円×15%-50万円=325万円」したがって2500万円相続すると325万円の相続税が発生することになります。
もちろんこれは概算ですので、必ずしもこの計算通りというわけではありませんが、おおよそこれくらいの相続税は発生すると思っておくと良いでしょう。
実際に暗号資産を相続する方法
暗号資産は現金や土地と違い、実体のない資産です。そのため暗号資産を相続するには「被相続人がどれだけの暗号資産を保有していたのか、その取扱い口座はどこだったのか」これらをすべて把握する必要があります。
ですので「本人が亡くなるまで暗号資産を保有していることを知らなかった」といったケースでは、保有している暗号資産の全容を把握するのはかなり難しいでしょう。
また、そういった場合、証券口座へのログインパスワードが分からなかったり、スマートフォンのロック解除ができず、取引履歴が確認できないといった事態に発展することがほとんどです。
暗号資産の相続にはまず個人の保有していた暗号資産の全容を把握することが先決になります。
すべての資産の把握ができたら取引業者へ連絡
故人が保有していた暗号資産の内容がすべて把握できたら、利用していた取引業者への連絡を行います。
このとき、相続に関する対応は業者によって様々で、事前申請が必要なケースもあります。まずは利用していた取引所に相続する旨を伝えて、業者の対応を待ちましょう。
国内の取引所であれば恐らく問題なく対応してもらえるはずです。
このとき、相続開始日程や相続人の個人情報などが必要になる場合があります。相続に必要な書類や手順は取引業者によって異なるので、このあたりも取引業者にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
暗号資産相続の簡略化
取引業者が海外であった場合
取引業者が海外であった場合、対応はその国のルールによって異なります。まずはサポートセンターに問い合わせが必要です。
また、DEXを利用していたり、メタマスクなどの仮想通貨ウォレットを利用していた場合は、こちらもサポートセンターの問い合わせが必要ですが、DEXは分散管理がされているので管理者という概念がありません。
ですのでこういったケースでは暗号資産相続に詳しい専門家に相談した方がいいでしょう。
取引所やスマートフォンのパスワードが分からなかった場合
取引所やスマートフォンのパスワードが分からなかった場合、個人の利用していたデスクやメモ帳、ノートなどを中心に探してみましょう。
証券口座のパスワードであれば最悪パスワードの再発行が可能ですが、スマートフォンのロックの場合そうはいきません。
スマートフォンのパスワードは端末に保管されているので、保存した本人以外には解除できない仕組みです。どうしてもスマートフォンのパスワードが分からない場合はパソコンからのログイン履歴や、パスワード保存履歴などから情報を集めてみるといいでしょう。
暗号資産ウォレットのパスワード
分散管理されている暗号資産ウォレットやDEXのパスワードを忘れてしまった場合、再発行することはできません。
ですが、これらの取引所はアカウント作成時に“リカバリーフレーズ”という単語を並べたパスワードを手書きで保存している可能性があります。
リカバリーフレーズは分散管理されたアプリケーションの、パスワード再発行キーワードとなっていて、万が一パスワードを忘れてしまった場合こちらを利用してログインできます。
しかし、リカバリーフレーズがない場合は、ウォレットにアクセスすることはほぼ不可能と考えていいでしょう。もし、ウォレット内に大量の暗号資産が残されている可能性があるときは、見覚えのない単語が羅列したメモを見つけることが最優先です。
参考記事はこちら
https://bitcastle.io/column/post-11088/
暗号資産相続対策
数多くのパスワード設定に、いくつもの取引所の把握。暗号資産の相続は残された家族にとっては悩ましい問題となります。
ましてや、専門的な知識が必要な暗号資産の取り扱いは、家族に詳しい方がいないと、どうしたらいいか分からなくなってしまうでしょう。
そうはならないために暗号資産の取引をされている方は、残された人に向けた対策をあらかじめしておくことが大切です。
家族に暗号資産取引をしていることを話しておく
まずはご家族に、自分が暗号資産を持っていることを伝えましょう。被相続人が生前に暗号資産を持っていたことを知らず、後日何らかの形で保有していたことが発覚すると家族は混乱してしまいます。
亡くなってすぐであればまだいいですが、何年も経ってからだと相続の手続きが難しくなるケースも考えられます。
相続でトラブルにならないためにも、家族への説明は徹底した方がいいでしょう。
パスワードは一括管理しておく
次に重要なのは、パスワードは一括管理しておくことです。できればノートなどにパスワードリストなどを作り、家族が見て、すぐにどこの口座のパスワードなのか分かるようにしておくことをおすすめします。
付箋などをパソコンディスプレイに貼っておいてもいいですが、大切なパスワードを盗み見られる心配もありますので、管理しやすいノートが安心です。
ただし、証券口座へのログイン情報は取り扱い注意の重要機密です。誰にでも簡単にみられる場所には保管せず、自分に何かあったときだけ家族がみられるようにするなどの配慮が必要でしょう。
【まとめ】暗号資産の相続は生前の準備が大切
暗号資産は“資産”として認められていますので、相続もできますし相続税も発生します。しかしながら、資産の性質上、取り扱いのルールが定まっておらず混乱する部分があることも事実です。
「暗号資産は相続対象の資産」とだけ覚えておいて、実際の手続きは専門家にお任せするといった方法が一番シンプルでいいかもしれませんね。
また、相続を代行してもらうするにしてもログインパスワードは必須です。
パスワードの保管、管理先の情報は、家族に前もって伝えておくなどの準備も忘れないようにしておくと手続きがスムーズに進むことでしょう。