為替レートの変動は、企業活動や個人の資産運用に直接的な影響を与えるため、特にその下落傾向を早期に捉えることが重要です。下落の兆候を察知し、適切な対応を取ることで、大きな損失を回避する可能性が高まります。
本記事では、為替が下落し始めるサインについて、ファンダメンタルズとテクニカルの2つの視点から解説していきます。特に、経済指標の変化や中央銀行の金融政策、貿易収支、政治的リスクといったファンダメンタルズの要因と、チャートパターンに表れる下落のシグナルを具体例とともに掘り下げて紹介します。
為替相場において、こうした分析は投資判断の大きな鍵を握るため、各要素を十分に理解しておくことが重要です。
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ファンダメンタルズによる下落のサイン
相場が下落し始めるきっかけとなるファンダメンタルズ。長期的に下落を始めるポイントを見極めるには世界の為替動向をチェックすることが重要です。
とはいえ、為替に関わる世界的ニュースは多岐に渡り、すべてをチェックするのは至難の業です。まずは多くの投資家が注目する指標に絞って分析していきましょう。
経済指標の悪化
経済指標の動向は、通貨の価値に対して直接的な影響を与えるため、定期的に発表されるGDP成長率や失業率、消費者物価指数(CPI)などの指標の推移には注意が必要です。経済が低迷しているとき、またはその兆しが見られるときは、通貨価値が下落しやすくなります。
例えば、2020年に世界的に広がったCOVID-19パンデミックは、日本経済にも大きな影響を及ぼしました。日本のGDP成長率が大幅に低下し、国内外の投資家が日本経済に対する信頼を失い始めた結果、日本円の下落圧力が一段と高まりました。
また、失業率の上昇が確認されると、消費活動や投資活動の低迷が予測され、通貨が売られる傾向がさらに強まります。経済指標の悪化は、その国の経済が抱えるリスクが大きいことを示唆し、結果として通貨の価値を押し下げる可能性が高まるのです。
中央銀行の金融政策
中央銀行が発表する金融政策も、通貨の価値に対して大きな影響を及ぼします。特に、利下げや量的緩和といった金融緩和策は、通貨の下落要因となりやすい傾向があります。
2022年に米国の中央銀行である米連邦準備制度(FRB)がインフレ抑制を目的に積極的な利上げを行いました。このFRBの動きにより、米ドルが魅力的な資産と見なされ、ドルの価値が上昇する一方、相対的に他国通貨、特に日本円は大きく下落しました。
また、過去に欧州中央銀行(ECB)が低金利政策を継続していた時期があり、その間はユーロの価値が下がりやすくなっていました。金融政策の変更や、金融政策の方向性に大きな変化が見られた場合は、その国の通貨に対して強い影響が及ぶため、注意深く観察することが重要です。
貿易収支の悪化
貿易収支が赤字となると、自国通貨の価値に対する圧力が強まりやすくなります。貿易赤字が拡大することで、輸入に伴う外国通貨への需要が高まり、相対的に自国通貨が売られる状況が発生するためです。
日本の場合、エネルギー資源をほとんど輸入に頼っているため、原油価格が高騰すると貿易赤字が拡大しやすくなります。実際に2022年には、世界的な原油価格の急騰に伴い、日本の貿易収支が大幅な赤字に転じ、日本円は対外的に下落する動きが見られました。
貿易収支が悪化すると、経済全体の競争力が低下するリスクが高まるため、通貨が下落するサインとしても認識されやすいのです。
政治的リスクと不安定な状況
政情の不安や政治的なリスクも、通貨の価値に大きく影響します。例えば、政権の交代や政策変更、戦争やテロといった地政学的リスクが高まると、通貨の信頼性が低下し、投資家がその通貨を避ける可能性が高まります。
2022年には、ロシアがウクライナへ侵攻し、この事態によりロシアのルーブルが急落しました。このような地政学的リスクは、通貨価値に対して強い下落圧力をかけ、投資家がより安定した資産に資金を移すことを促します。また、2016年に英国がEUからの離脱(ブレグジット)を決定した際、ポンドが急落しました。
ブレグジットにより、英国経済が抱える不透明感が増し、通貨が下落しやすい状況が長期間続きました。
市場心理と投資家行動
市場心理も、為替レートに強く影響します。市場全体の心理がリスク回避に傾くと、安全資産であると見なされている通貨に資金が集中し、一方でリスクの高いとされる通貨は売られる傾向が強まります。
2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大した際には、投資家心理が大きくリスク回避に傾きました。リスク回避姿勢が強まると、比較的安全とされる日本円やスイスフランが買われた一方で、新興国通貨(例としてトルコリラやブラジルレアル)は大幅に下落しました。
市場心理の変動によってリスクの高い通貨が売られることで、急激な通貨下落のサインが発生することがあります。
チャートパターンによる下落のサイン
ファンダメンタルズと合わせて、チャートパターンを活用することで、さらに精度の高い下落サインの検出が可能です。
以下のようなチャートパターンが出現した場合は、テクニカル分析として下落トレンドの兆候が出ていると判断されることが多いため、注意深く観察することが必要です。
ヘッドアンドショルダーズ(頭と肩)パターン
上昇トレンドが終了し、反転して下落トレンドに入る際に現れるパターンです。このパターンでは左肩、頭、右肩と3つの山が形成され、中央の「頭」が最も高くなります。価格がネックラインを下回ると、売りシグナルが確定します。
具体例:
ドル/円のチャート。
価格がネックラインを割り込んだ瞬間、売りの圧力が急激に高まり、下落が加速しました。これを見たトレーダーは、下落トレンドの兆候を捉え、早めに売りポジションを取る決断ができたと考えられます。
ダブルトップ
ダブルトップは、2回高値を試みたものの失敗し、下降トレンドに入るサインです。上昇トレンドの終わりを示し、サポートラインを割ると強い下落が予測されます。
具体例
ユーロ/ドルのチャート。
2回高値を試みる動きがありましたが、最終的にはサポートラインを下回り、ユーロが大幅に下落しました。このサインを見逃さずにいれば、売りの判断が早期にできたことでしょう。
トリプルトップ
3回連続で高値更新に失敗し、サポートラインを割り込むと大きな下落が発生する傾向があります。
具体例
ポンド/ドルのチャート。
確認されたトリプルトップでは、3回目の高値更新が失敗した後、強い下落が発生しました。サポートラインを下回ると、トレーダーはさらなる下落の予兆と判断し、売りポジションを取ることが一般的です。
急落に備えるリスク管理
急落時のリスク管理は、為替取引において損失を最小限に抑え、投資資産を守るために不可欠です。特に、突発的な経済イベントや政治的要因で為替が急激に動く際、適切なリスク管理を行うことで、予期しない損失から自分の資産を守ることができます。
以下では、急落の際に有効なリスク管理の方法について詳しく解説していきます。
ストップロス(損切り)注文を設定する
最も基本的で効果的なリスク管理手法がストップロス(損切り)注文の設定です。あらかじめ設定した価格に達すると自動でポジションが決済されるため、急落時の大幅な損失を防ぐことができます。
特に、トレード戦略の中で許容できるリスクを設定し、そのリスクに応じてストップロスのポイントを決めておくことが重要です。
具体例
もしドル/円で100円の買いポジションを持っている場合、あらかじめ95円にストップロスを設定しておけば、価格が95円に下落した時点で自動的にポジションが決済され、損失を限定できます。この設定により、例えば大きな経済イベントや不意の発表によって急激な円高が進行した場合でも、事前に決めた範囲内の損失に留めることができます。
レバレッジのコントロール
レバレッジを高くすると少額の資金で大きな取引が可能になる一方、損失が膨らむリスクも高まります。急落時にレバレッジを大きくかけていると、予想以上の損失を被る可能性があるため、常に適切なレバレッジの範囲内で取引することがリスク管理において重要です。特に、初心者やボラティリティの高い相場では、低めのレバレッジに抑えることが推奨されます。
具体例
例えば、100万円の資金でレバレッジを10倍にして1,000万円分の取引を行った場合、わずか1%の価格変動で10万円の損益が発生します。もし急落により3%下落した場合、30万円の損失が発生するため、資金の30%を失うことになります。一方、レバレッジを2倍に抑えていれば、同じ価格変動で損失は6万円に抑えられ、リスクをコントロールしやすくなります。
リスク分散(ポートフォリオの分散投資)
特定の通貨に大きな資金を集中させると、急落時の影響が大きくなりやすいため、複数の通貨ペアや異なる市場に分散して投資を行うことがリスク管理につながります。異なる通貨や資産に分散することで、特定の市場や通貨が急落した際でも他のポジションで損失をカバーできる可能性があります。
具体例
日本円や米ドル以外に、ユーロや豪ドルにも資産を分散させたり、さらに為替以外の株式や債券、金などの安全資産に分散することで、特定の通貨の急落時に資産全体への影響を軽減することができます。例えば、米ドルが急落した場合でも、他の通貨や資産が相対的に価値を保つか上昇することで、損失を相殺する効果が期待できます。
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析を活用したモニタリング
急落時には、単なる価格の変動だけでなく、背景にある原因を正しく把握することが重要です。テクニカル分析では、移動平均線やボリンジャーバンド、RSIなどの指標を用いて下落トレンドの兆候を捉えることが可能です。一方、ファンダメンタルズ分析では、経済指標の発表や中央銀行の金融政策、地政学的なリスク要因などを把握し、急落の要因を理解します。
具体例
米国のFRBが利上げの停止を発表し、ドルが急落する可能性があると事前に予測できれば、急落に備えてポジションを整理したり、新たにストップロスを調整する対応が可能です。また、移動平均線がデッドクロスするタイミングで下落の兆候を把握できれば、ポジションを縮小するなどの判断がしやすくなります。
ヘッジポジションの活用
急落が予想される場合、ヘッジポジションを取ることで、リスクを軽減することができます。ヘッジとは、リスクを抑えるために反対方向のポジションを取る手法で、急落時の損失を相殺する効果があります。
具体例
例えば、ドル/円の買いポジションを持っているときに急な円高のリスクが懸念される場合、ドル/円の売りポジションや、円を含む別の通貨ペア(例: ユーロ/円)の売りポジションを持つことで、急落時のリスクを分散することができます。また、場合によっては、米ドルに対する日本円のリスクを、金(ゴールド)の購入など他の資産を用いたヘッジで抑えることも可能です。
資金管理(ロット数や取引頻度の調整)
取引する際には、資金の一定割合以上の損失が発生しないよう、ロット数(取引量)を調整することもリスク管理の一環です。また、取引の頻度を抑えることで、予期せぬ急落に巻き込まれるリスクを減らすことが可能です。資金管理を徹底することで、損失が大きくなりすぎるリスクを軽減します。
具体例
よくある方法としては、1回の取引で資金全体の2%を超える損失を出さないようにルールを設定すること。これにより大きな下落が発生しても資産を守ることができます。さらに、1日あたりの取引回数を制限することで、予想外の急落に巻き込まれるリスクを軽減し、冷静な取引が可能になります。
【まとめ】下落のサインはファンダメンタルズとチャート分析で多角的に判断する
為替が下落し始めるサインを見極めるには、ファンダメンタルズとテクニカル分析の両方を組み合わせることが効果的です。経済指標の悪化や中央銀行の政策、貿易収支、地政学的リスク、投資家の市場心理などのファンダメンタルズ要因を確認しつつ、ヘッドアンドショルダーズやダブルトップなどのチャートパターンを見逃さないようにしましょう。
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執筆者 西村大樹