先日発生した、仮想通貨交換業者のZaif(ザイフ)によるハッキング被害。Zaifの運営会社でもあるテックビューロ株式会社が自己資金で顧客に補填できなかったことを金融庁が問題視しています。
その流れの中で、仮想通貨交換業協会は会員各社に盗難リスクに備えた安全資産の保有を義務付けることが分かりました。今回は日本仮想通貨業協会が検討している盗難リスクへの対応を紹介します。
また、参考までにFX会社の信託保全についても解説し、仮想通貨業界と比較してみます。
交換業者に預金や国債の保有を義務化へ
仮想通貨交換業協会の自主規制原案によるとサイバー攻撃の秘密鍵喪失リスクを評価した上でそれに見合った額を預金や国債などの安全資産で保有するように義務付けました。
オンライン上で顧客から預かった秘密鍵を管理する場合の適用になりますが、オンライン環境でサイバー攻撃を受けないようなと仕組みを敷いている場合は盗難リスクの評価で考慮の余地があるとしています。
安全資産を保有できなければ、保全の対象金額について銀行などの金融機関と保全契約を結ぶように求めています。さらに、原案では顧客から預かった仮想通貨が流出した場合に対応すできるように損害賠償の方針を明記することも盛り込んでいます。
仮想通貨交換業者による顧客資産の流出等は1月のcoincheck、9月にZaifで起こっています。bitflyerからは不正アクセスから不正送金の被害が出ています。今回、協会が取り組んでいることは顧客の資産を安全に管理する点において前進したと言えます。
ただ、仮想通貨交換業協会は現段階で決定した事項ではなくコメントを差し控えるとのことでした。正式な発表はいつ頃あるのか注視したいところです。
仮想通貨交換業協会について
仮想通貨交換業協会は2018年4月23日、一般社団法人として設立されました。協会員には国内の仮想通貨交換業を営む16社が加盟しています。
仮想通貨の取引が急速に進んだ2017年から後手に回っていた自主規制づくりを急ぐ目的で設立された協会でもあります。
16社の中には先日、不正流出のトラブルを引き起こしたZaif(テックビューロ株式会社)も含まれ、メジャーな取引所は加盟していると考えていいでしょう。
FX会社は信託保全で投資家を守っている
FX取引を行なっている方はご存知だと思いますが、FX会社は顧客から預かった証拠金を信託銀行に信託(預ける)することでFX会社が倒産や破綻しても信託保全されている範囲内で投資家に返還されます。
つまり、投資家はFX会社の倒産などを気にすることなく取引を楽しむことが可能になっているのです。先の仮想通貨交換業協会の原案ではこのような信託保全の制度も検討されています。
国内の仮想通貨交換業者の補償制度
後手に回りがちな仮想通貨業界の自主規制ですが、補償制度に関しては全く行なっていないわけでもありません。
例えば、bitflyerでは補償サービスがあります。「預かり資産の合計が円換算で100万円を超える2段階認証登録ユーザー」は500万円。それ以外の2段階認証登録ユーザーは10万円の保証がついています。しかし、不正な日本円出金が生じた場合に限られています。
残念ながらbitflyer以外では補償制度や補償サービスは確認できていません。今の所、取引所の補償制度が無いのが現実ですので取引する際は分散管理を行うなど個人の対策に任されています。
銀行はペイオフ制度
顧客の資産保全で銀行はペイオフ制度(預金保護制度)があります。簡単に言うと、1000万円までは預金保護機構が補償してくれる制度です。
そもそも銀行は預金保護機構に保険金を支払うことで銀行業を営むことが許されます。銀行が倒産することは考えにくいですが私たちの資産を守ってくれる後ろ盾があるのです。
念のためですが、ペイオフ制度は1000万円までの補償になるので、それ以上の資産を預けるのは危険であることは覚えておきましょう。
執筆者 西村大樹