仮想通貨取引所「Bancor(バンコール)」にハッキング、被害額は15億円相当

分散型取引所であるBancor(バンコール)は7月9日、ハッキングによる仮想通貨盗難被害を受けたと発表しました。

盗まれた通貨はイーサリアム(ETH)をはじめとした複数の通貨で、被害額は日本円で約15億円相当にのぼります。また、すでに盗まれた一部のトークンは他の取引所で交換されたとみられています。

Bancorはハッキング被害の後、プラットフォームをオフラインにし、「ユーザーのウォレットへの影響はない」とツイッター上で述べました。

Bancorが発表したレポートによれば、現在盗まれたトークンBNTはバンコールのプロトコルに組み込まれたシステムが発動し凍結されています。

盗まれたBNTはセキュリティへの侵害から復旧するために緊急で使用され、犯人が盗んだトークンを流用することをやめさせるための仕組みだと述べています。しかし、イーサリアム(ETH)と他のトークンは同じように凍結することは不可能だということです。

Bancorは現在、「盗まれた仮想通貨を追跡し、犯人がそれらを換金することをより困難にするためにいくつかの仮想通貨取引所と協力している」と述べています。
引き続き情報を更新していくとしています。

Bancorは昨年ICOを実施し、たった3時間で150億円以上を調達しました。仮想通貨業界でも大きな期待を担っていました。
Bancorの特徴は流動性で、通貨を保有することによって、スマートトークンと呼ばれる独自のトークンを発行することができます。そのトークンの価格を自動的に調節し、流動性を高めるために開発された非中央集権的ネットワークです。

Bancorとは

Bancorは分散型取引所といい、DEXと呼ばれています。
一般的な中央集権型取引所とは違い、ブロックチェーンでできた取引所となっています。
DEXは管理者やほかの監視機関などの第三者を必要とせず、中央集権型の取引所(一般的な取引所)と同じことをすることが可能です。DEXは一般的な資産の預け入れ、引き出しはもちろんですが、買い手と売り手を自動的に最適な価格でマッチングし、その価格で取引することが可能になります。

売買の履歴はすべてブロックチェーン上に記録されているので、改ざんはほぼ不可能な仕組みになっています。
すべてのノードで同じ取引履歴を共有しているので、一つのノードが攻撃されても資産が消滅することはなく、攻撃に強い取引所としての特徴があります。

ハッキング被害の理由とは

ではなぜ分散型取引所であるBancorはハッキングを受け被害にあったのでしょうか。
今回の経緯は詳しく明かされていませんが、おそらく運営側の問題だと予想されます。
Bancorは取引をスムーズに行うために、一定額を運営元のウォレットに保管していました。その弱点を突かれ、今回のハッキングが行われたとみられます。ユーザーへは直接被害はありませんが、運営元が被害を受けます。

これまでの中央集権型の取引所への攻撃ではなく、ハッキングに強いとされているDEXへの攻撃を許してしまったため、さらに仮想通貨界での混乱がおこる可能性があります。

今後は、出来高の少なさや法定通貨による取引ができないこと、手数料が高いことなどのDEXのデメリットである部分も相まって、まだまだ中央集権型の取引所のほうが需要は高いのではないかと思われます。もちろん多くのメリットもあるので、課題をクリアしつつ、さらなる利便性や安全面の向上を期待したいです。

これまで様々な取引所でハッキングによる仮想通貨の盗難や攻撃は相次いでいますが、一刻もはやい対策を練る必要があります。今回は15億円程度ですが、これから何百億、何千億円というハッキングによる盗難があった場合、その特定の通貨のみならず、仮想通貨全体の市場に大きな影響をもたらしてしまうことになるので、やはりセキュリティへの問題は解決するべき最優先事項となるでしょう。

しかしこれからも、今までのように対策をたてても犯人側は仕組みのすきを突いて攻撃してくるでしょう。しばらくは対策と攻撃側のいたちごっこになるのでしょうか。その中できちんと強化されるのならよいのですが、仮想通貨市場がつぶれてしまう可能性もあるので、国や政府としての対策も求められてきそうです。

今回のハッキングを受け、仮想通貨全体の価格への影響はほとんどありませんが、BancorのトークンであるBNTの価格に大きな影響がありました。
Coinmarketcapからのデータによると、数時間で価格は約3.1ドルから約2.8ドルへ、約20%の急激な下落を見せました。

執筆者 西村大樹