ステーブルコインの種類は?特徴・将来性・注意点も解説

「ステーブルコインって何?」

「ステーブルコインにはどんなメリットがあるの?」

ステーブルコインの種類や特徴、メリット・デメリットについて解説していきます。近年注目を集めている新たな仮想通貨ステーブルコイン。一体どのようなコインなのか、将来性や種類ごとの注意すべきポイントなども紹介していますので参考にご覧ください。

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ステーブルコインとは?

コイン

ステーブルコインとは、文字どおり「ステーブル=安定した、変動のない」、「コイン=仮想通貨」という意味になり、価格変動が少なくなるよう設計された仮想通貨を指します。

ビジネスの世界で仮想通貨を利用する際は、価格が安定している通貨であるかどうかがとても重要になります。仮想通貨の価格が大きく変動すると、仕事に大きな影響が出てきます。また、保有する仮想通貨の価格変動リスクについても考慮し続ける必要があります。

ステーブルコインは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)のようなボラティリティの高い仮想通貨とは異なり、基本的には価格が安定しています。そのため、ビジネス世界での新たな基軸通貨としての普及が期待されています。

ステーブルコインにはいくつかの種類があり、最も人気のある「テザー(USDT)」を始め、これまでに世界中で多くのコインが発行されてきました。

仮想通貨テザー(USDT)は、2015年2月にTether Limited社が発行を開始した仮想通貨です。2021年8月現在、市場ランキング...

ステーブルコインのメリット

世界地図

ここでは、ステーブルコインにはどのようなメリットがあるのかをご紹介していきます。

価格が安定している

初めての仮想通貨であるビットコイン(BTC)は、仮想通貨業界における基軸通貨となるべく2009年に誕生しました。しかし、結果的にそのボラティリティの大きさから、基軸通貨としての信頼を完全に獲得しているわけではありません。

ビットコイン(BTC)だけでなく、仮想通貨は全般的にボラティリティが大きく、従来の円といった通貨のように使うのは難しいというのが現状です。

そこで、ブロックチェーン上で既存の通貨や資産を担保として、より安定した仮想通貨を発行しようという取り組みが立ち上がりました。こうして、価格が安定している仮想通貨「ステーブルコイン」が誕生したのです。

ボーダーレス通貨である

ステーブルコインは法定通貨と連動しますが、ブロックチェーン上で自由に送金することが可能です。

また、ブロックチェーン上にあるため、早くて低いコストで送金することが可能です。そして、一般的に法定通貨よりも早く低コストと言われています。

既存の法定通貨を使用したクロスボーダー決済はその手数料の高さや送金の遅さ、そして不透明性から長い間大きなな課題とされてきました。

ステーブルコインを活用することでクロスボーダー決済の問題を解決し、より利便性の高い国際送金が可能になると考えられます。

法定通貨の代替機能

価格の暴落リスクに晒されないという点や、低い手数料でのデジタル決済・送金が実現できる点から、「国境を超えた法定通貨としての機能」も期待されています。

仮想通貨が誕生した当初、主な目的のひとつに国際間決済の利便性向上が含まれていました。世界規模のネットワークであるブロックチェーンに存在し、国境や法定通貨同士の両替などといった概念がまったくない仮想通貨は、国際間決済や海外送金などにとても便利かつ低コストで行うことができます。

仮想通貨の価値が乱高下していることで、本来の機能に使いづらい側面がありましたが、ステーブルコインならその問題を解決できます。

海外送金には国際ネットワークであるSWIFTという仕組みを用いるのが一般的ですが、SWIFTでも送金完了までに数日を要するため、価値が安定しているステーブルコインの利便性は高まるでしょう。

ステーブルコインのデメリット

世界地図とチャート

ステーブルコインは、価格が安定しているため国境を超えた法定通貨になることが期待されています。一方で、ステーブルコインにもデメリットが存在します。ここでは、ステーブルコインのデメリットをご紹介していきます。

規制が不明確

ステーブルコインは各国の規制当局が監視の目を光らせています。

法定通貨に連動したステーブルコインは犯罪者のマネーロンダリングとして使用される可能性が高いため、犯罪リスクが存在すると考えられているからです。

適切な担保が保証されていない場合、発行側が意図的に価格を操作し、儲けを得るといった行為も起こる可能性があります。

各国の規制が厳しくなった場合、ステーブルコインの運用企業のビジネスが中止となったり倒産するなどで発行しているステーブルコインの価値が無くなってしまう可能性もゼロではないのです。

詐欺のリスクがある

ステーブルコイン市場では、価値が安定していることに価値を見出す投資家や企業からの需要が高いため、価格の安定性を偽って購入させるという詐欺が存在します。

例えば、安定性を担保する手段としての資産を保有していないのに資産を保有していると偽って意図的に操作されたステーブルコインを発行する企業も存在します。

ステーブルコインがどのような担保で価値があり、その価値の裏付けは信用できるものなのかを確認することが大切です。

セキュリティリスクがある

ステーブルコインはブロックチェーン上に構築されているためハッキングなどのセキュリティリスクが存在します。

もちろんブロックチェーンを使用しているため一般的に決済に使用されている法定通貨と比較するとそのセキュリティリスクは非常に低いと言われています。

加えて、法定通貨などの資産を担保として運用している場合、その資産が運営側から盗まれる可能性も存在します。

ステーブルコインのセキュリティ性は高いのですが、取り扱う際には十分な注意が必要でしょう。

ステーブルコインの種類

お金

ステーブルコインには、大きく分けて「法定通貨担保型」「仮想通貨担保型」「無担保型(アルゴリズム型)」の3種類が存在します。これらは、どのような仕組みでステーブルコインの価格を安定させているかに違いがあります。ここでは、それぞれの種類や特徴についてご紹介していきます。

法定通貨担保型

現在市場に流通しているほとんどのステーブルコインが法定通貨担保型に該当します。これは、法定通貨を担保に発行されるステーブルコインであり、担保となった法定通貨の価格に連動させることでボラティリティを抑える仕組みになっています。

法定通貨担保型のステーブルコインのメリットは、他のステーブルコインよりも価格が安定している点にあります。また、法定通貨を担保にすることで自由に発行することができるため、より自由度の高い仕組みになっている点もメリットだといえます。

法定通貨担保型のステーブルコインの代表例として、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)、トゥルーUSD(TUSD)、セロドル(CUSD)などがあげられます。フェイスブックが主体となり計画を進めているDiem(旧称:Libra)も、法定通貨担保型に分類されます。

法定通貨担保型のステーブルコインにおけるリスクとしては、主にカウンターパーティリスクがあげられます。カウンターパーティリスクとは、ステーブルコインの発行や管理を担う組織への信頼が前提になることから生じるリスクのことを指します。例えばテザー(USDT)の場合、発行や管理をテザー社が行なっているため、テザー社に不正などの問題が起きる可能性はゼロではありません。少なからずリスクがあるということです。

なお、法定通貨担保型のステーブルコインは、全体の99.5%が米ドルを担保に発行されているのが現状です。

仮想通貨リブラ(Libra)の概要や特徴、将来性などについて詳しくご紹介します。リブラ(Libra)は世界トップクラスのユーザー数を誇るSNS「Facebook」が発表し、今後ディエム(Diem)へと名称が変わることが明示されている仮想通貨です。

仮想通貨担保型

次に挙げられるのが、仮想通貨担保型のステーブルコインです。これは、仮想通貨を担保に発行されるステーブルコインであり、担保となった仮想通貨に価格を連動させることでボラティリティを抑える仕組みとなっています。

仮想通貨担保型の特徴は、法定通貨担保型と違い特定の管理者が存在しない点です。そのためDeFi市場などとの相性が良く、ブロックチェーン上で契約を自動的に実行することができます。

仮想通貨担保型の代表例としてはダイ(DAI)があげられます。現時点ではイーサリアム(ETH)やベーシック・アテンション・トークン(BAT)、USDコイン(USDC)、トゥルーUSD(TUSD)、コンパウンド(COMP)など計14の仮想通貨が担保として使用することが可能となっています。

仮想通貨担保型のステーブルコインにおけるデメリットとしては、価格を安定させることの難しさがあげられます。そもそもステーブルコインが開発された目的は、仮想通貨のボラティリティを解決するためでした。しかし、その仮想通貨を担保に発行されるステーブルコインの価格を安定させることは、非常に難しい仕組みであるのは想像がつくでしょう。

無担保型

最後に挙げられるのが、無担保型のステーブルコインです。法定通貨担保型や仮想通貨担保型とは異なり、担保資産なく発行されるステーブルコインであり、あらかじめ定められたアルゴリズムによってボラティリティを抑える仕組みとなっています。

外部要素の影響を受けない設計となっているため、分散性や拡張性に長けているというメリットがあります。発行量をアルゴリズムによって制御する様子から、中央銀行が行う金融政策を連想させるため「シニョリッジシェア型」とも呼ばれています。

無担保型の代表例としては、ベーシス(BAS)が挙げられます。しかし、無担保型は他のステーブルコインと比較すると事例が少なく実用化も進んでいないのが現状です。

無担保型のステーブルコインにおけるデメリットとしては、理論ばかりが先行し実際に想定の動きを実現できるか不透明な部分が多い点にあります。発行前に定めるアルゴリズムによって全てが制御されるため、高品質なアルゴリズムが求められる点も難易度を高めている要因のひとつなのです。

日本円のステーブルコイン

日本国旗を指す図

ここまででステーブルコインの概要や種類などについて紹介してきました。いずれも世界的な情報となっており、ステーブルコインを身近に感じることは難しいのではないでしょうか。

しかし近年、ステーブルコインは日本でも少しずつ盛り上がりを見せています。ここでは、法定通貨担保型に該当する日本円を担保に発行されるステーブルコインについて解説していきます。

三菱UFJ発行のステーブルコイン「MUFG」

三菱UFJフィナンシャルグループは、日本円を担保に発行されるステーブルコイン「MUFGコイン」を計画しています。元々は自社で発行するステーブルコインとして機能させる計画でしたが、他社でも簡単に独自のステーブルコインが発行できるようプラットフォーム型の構想に切り替えています。

MUFGコインは、支払いや円との換金、個人間送金といった場面を想定しており、リクルートの運営するホットペッパーグルメの加盟店で使えるようになる予定です。

GMOのステーブルコイン「GYEN」

GMOインターネットグループは、米国銀行法規制に準拠した世界初の日本円を担保にしたステーブルコイン「GYEN」を発行しています。ニューヨーク州金融サービス局より配布されるライセンス制度「ビットライセンス」の元に、発行対象は現時点では海外居住者に限定されています。

日本ではステーブルコインの法規制が明確化されておらず、国内で発行するにはリスクが伴うため海外でのみ発行されているのが現状です。GMOは、GYENと合わせて米ドルを担保に発行されるZUSDも提供しており、将来的には両者による国際送金の実現を目指す計画をしています。

LCNEM発行のステーブルコイン「LCJPY」「JPYX」

ネム(XEM)のウォレット開発を手がけるLCNEMは、独自ブロックチェーン「JPYX」と「EURX」を構築しています。それぞれ、日本円とユーロに連動するステーブルコインの発行プラットフォームです。

JPYXブロックチェーンでは、ガバナンストークンJasmineを用いてステーブルコインJPYXを発行することができます。またEURXブロックチェーンでは、ガバナンストークンEustomaを用いてステーブルコインEURXを発行可能となっています。

LCNEMは、JPYXとEURX以外にもステーブルコインに関する取り組みを行なっています。「LCJPY」と呼ばれる前払式支払い手段のステーブルコインは、NEMブロックチェーンの独自トークン発行機能であるモザイクを使って発行される設計となっています。

日本暗号資産市場のステーブルコイン「JPYCoin」

日本暗号資産市場の発行する「JPYC(JPYCoin)」は、イーサリアム(ETH)の共通規格ERC-20を使って発行されるステーブルコインです。1JPYCが1円に連動するよう日本円を担保に発行されています。

JPYCoinも資金決済法上の前払式支払手段であり、仮想通貨とは言えません。しかし、ERC-20を使って発行されているためイーサリアム(ETH)上で取り扱うことが可能となっています。

日本暗号資産市場では、JPYCoinの他に「イチバ(ICB)」と呼ばれるステーブルコインも発行しており、JPYCoinを一般個人向けに、ICBを事業者向けに提供しています。

【まとめ】ステーブルコインは将来性を大きく期待された通貨

従来の仮想通貨が抱える課題を解決すべく生まれたステーブルコインですが、そこにはいくつかの課題も存在していました。

特に注目すべきところは、各国の規制が不明確な点にあります。現時点では、世界的にもステーブルコインに対する規制は整備されておらず、法整備に先立ち導入が進んできたため、規制によっては今後与える影響も大きくなることが予想されます。

一方で、ステーブルコインは大きな将来性を秘めていることも間違いないと言えます。前述したように、「国境を超えた法定通貨としての機能」や、従来の仮想通貨に比べて価格が安定していることや、仮想通貨の抱える課題を解決する役割など、その必要性は世界中に広がりつつあります。さらに、日本国内でもステーブルコインは注目されており、実際に日本円を担保にしたステーブルコインの発行を目指しています。

法定通貨とも従来の仮想通貨とも異なる、新たな仮想通貨「ステーブルコイン」。実際に購入する際は、どのような仕組みで何を価値の担保にしているのかという点を事前に確認して納得したうえで購入しましょう。

執筆者 西村大樹