仮想通貨取引を始めると必ず目にする“テクニカル分析”
勉強しようにも専門用語が多く、分析方法も多岐に渡るため初心者の方にはかなり難しいイメージを持たれているのではないでしょうか?ですが実はテクニカル分析はコツを掴めば誰でも簡単に取り入れることのできる分析方法になります。本記事では前半にテクニカル分析の基礎、後半に実際に効果を発揮する場面。それぞれシンプルに解説します。
テクニカル分析に悩んでいる方、勉強して取り入れてみようという方は是非参考にしてみてください。
仮想通貨ってまだ今一つよく分からない、FXとは違うの?という方はこちらも参考にしてください。
仮想通貨(暗号資産)とFXの違いとは?それぞれの仕組みやメリットを解説
テクニカル分析とは
テクニカル分析とは過去の値動きから未来の値動きを予測する分析方法です。
世界情勢やニュースをもとに将来の値動きを予測するファンダメンタル分析と違い、過去に形成されたチャートデータをベースに市場の方向性を予測します。天災や事故などの突発的な価格変動が起こった場合はテクニカル分析が機能しない、というデメリットはありますが、平常時はかなりの確率で先行きを予測できる優秀な分析方法です。
では実際に仮想通貨取引で使えるテクニカル分析にはどのような手法があるのか紹介します。
仮想通貨取引で使えるテクニカル分析は3種類
テクニカル分析の手法は数多く存在しますが考え方は3種類に分けられます。
その中からそれぞれの考え方の基本となる分析方法を取り上げました。前提として表示チャートはローソク足で説明しています。
ライン分析
チャートに任意の線を引いて分析する方法です。
ラインを引くだけ?と疑問に思うかもしれませんが、それだけで視覚的に売買ポイントが判別できるようになり、取引の判断が早くなります。ラインの引き方は人によって様々ですが、基本がわからないと、意味のあるラインを引くことができません。
ラインの基本を学んでいきましょう。
トレンドライン
相場の方向感を見るために使います。
チャートの安値を結んで傾きが上方向であれば上昇トレンド、上げ相場です。高値を結んで傾きが下方向であれば下降トレンド、下げ相場になります。なるべく目立つ高安値を見つけて大きく線を引くことが大切です。
【上げ相場のトレンドライン(赤線で描写)】
サポートライン
ここから下には値下がりしないだろうと思うポイントに描写するラインです。同じ価格帯で何度も下げ渋っているところを見つけます。あまり過去まで遡らず、日足チャートでは直近一か月程度がベスト。線はなるべく角度をつけずに水平に引きます。
【黄色線がサポートライン】
レジスタンスライン
抵抗線とも言われます。ここから上に抜けられないと思うポイントに描写するラインです。高値と高値を結んで水平にラインが引ける場所を探します。サポートラインの反対の名称と捉えても問題ありません。こちらも推奨期間は日足ならば直近1か月程度までが有効です。
【水色線がレジスタンスライン】
水平線
同じ水平線でもレジスタンスラインやサポートラインと区別します。その理由は線を引く場所に定義はなく、何かの目印に使うことが多いからです。明確な定義づけがない分、実際に使う場面ではラインの引き方に迷うところでもあると思います。
参考までに水平線を引く場面が多いケースを2つ紹介します。
【ケース1】
値動きが一定の幅で上下を繰り返しているが、明確な高安値がない、もしくは見つけにくい場合。
レジスタンスラインやサポートラインは引けないが大まかに値動きの幅が見て取れるときに高値と安値に1本ずつと真ん中に1本、合計3本ラインを引くやり方が有効です。注目する取引価格帯を限定することで現在の価格が上限に近いのか下限に近いのか判別しやすくなります。
水色が高値線、黄色が安値線、オレンジが中間線現在レート(一番右端の足)は安値圏であることがわかる。
【ケース2】
キリのいい価格帯が近い。
仮想通貨の価格が100万円や200万円などキリのいい価格帯は大口の売買注文が入っていることがあります。注文がすべて消化されると、大きなトレンドを発生させることが多いので起点になりそうな価格に水平線を引くことで戦略が立てやすくなります。
水色線はちょうど1ビットコイン800万円に引いています。レジスタンスラインにもなり価格下落の起点になりました。
オシレータ系インジケータ
オシレータとは振り幅や振り子という意味で、相場の売られ過ぎや買われ過ぎを判断する分析方法です。オシレータ系インジケータは単体で効果を発揮するものではありません。現在の相場の環境認識を行うために使用する分析手法になります。
環境認識とは、現在の相場が上げ相場なのか下げ相場なのか市場の流れを確認する作業のことです。環境認識を誤ると含み損が大きくなったり、損切をする必要が出てくる場合もあるので注意が必要です。環境認識はエントリー前の準備運動とも言えるでしょう。
オシレータ系インジケータの項目では、取引戦略の立て方の手順と使いやすいインジケータの紹介をしていきます。取引戦略を立てるにはまず環境認識でトレンドを確認します。トレンドを確認したら取るべき戦略は基本的に以下の2択です。
・すでに発生したトレンドに乗る
・これから発生するトレンドの起点を狙ってポジションをとる
特にこれから発生するトレンドの起点を狙う手法とオシレータ系インジケータの相性がよく、逆張り手法には欠かせないツールです。
そもそもトレンドは、需給のバランスが崩れたときに発生する性質があります。なのでトレンドの起点を探すには“売られ過ぎ”“買われ過ぎ”のどちらかの状態が顕著になり、バランスが崩れ始めた時を見つけなくてはなりません。しかし、どの程度バランスが崩れたかはチャートを見るだけではわかりにくく、小さなバランスの崩れは“ダマし”と呼ばれトレンド発生の起点になりません。急いでポジションを持つと含み損を抱えるリスクになります。
なるべくダマしを避けつつポジションをとる為には明確な分析基準を設けることが必要です。そのため逆張りをするには“売られ過ぎ”“買われ過ぎ”を視覚化してくれるオシレータ系インジケータが使われます。このインジケータを取り入れると取引ポイントは数値化して教えてくれるため、誰でも簡単にトレンドの起点を見つけることができるようになります。
インジケータの紹介
インジケータに使用している計算式や仕組みは複雑なものが多いので、詳しい説明は割愛します。なるべく簡単に解説していくので数式の厳密性よりも仕組みの雰囲気と使い方だけ押さえてもらえれば大丈夫です。
RSI
ある一定期間の高安値の値動きを足したものに対して同じ期間の前日比を割合を示したもの。
データは1本線のグラフがチャートウインドウの下に表示されます。判断方法は非常にシンプルで数値が70~80パーセント以上で買われ過ぎ、20~30パーセント以下で売られ過ぎと判断します。とても分かりやすいツールですが、ダマシが発生しやすいので相場が急激に変動した場合は注意が必要です。
・青丸が下落起点
・赤丸が上昇起点
RSIが効いているのが分かります。
RCI
相場の過熱感を見ています。
例えばビットコインがある一定の期間値上がりを続けたとすると、その期間ではビットコインが買われ過ぎていて、市場の過熱感が高いといえます。逆に値下がりを続けていたとしたら売られ過ぎ。その為相場の過熱感は低いです。これを数値化したものがRCIで-80パーセントで売られ過ぎ+80パーセントで買われ過ぎ目安になります。
RSIと似ているのですが、RCIは単純割合ではなく設定期間に値動きの順位をつけて計算するので短期的な流れを見るときに有効です。
赤枠がRCI80パーセントを超えて上昇のピーク、青枠がRCI-80パーセントで底値圏であることを示している。
ストキャスティクス
RSIに非常に似ていて2本の線で売られ過ぎ買われ過ぎの表現をしているのがストキャスティクスです。
%Kと%Dの2本の線が描写されていて数値が算出されます。RSIと同じように70パーセント以上が買われ過ぎ20パーセント以下が売られ過ぎです。
具体的な見方として%D線が70パーセント、%K線が80パーセントだったとします。この時%K線が%D線をクロスして60パーセント付近まで下がればトレンド転換の予兆としてとらえることができます。RSIと違いトレンドの転換点のタイミングを計ることができるのが特徴です。
緑線が%K、赤点線が%D。白枠で囲った部分が説明にあったトレンド転換予兆のサイン
MACD
オシレータ系の中でも最強のツールです。MACD、シグナルの2本の線から構成され、トレンド転換の初動を取りに行く分析ツールです。
2本の線の背景にヒストグラムという棒グラフのようなものが描かれています。買いシグナルが出るとプラス域になり、売りシグナルが出るとマイナス域になります。一目で売買シグナル点灯が分かるようになっているので2本の線と合わせて確認すると効果的になります。
【具体的な使い方】
・MACDがシグナルを下から上にクロスしたらゴールデンクロス
・MACDがシグナルを上から下にクロスしたらデッドクロス
これら2つがチャート上のどこのポイントで発生したかを見ることによってトレンド転換の初動を取ることができます。逆に言えばシグナルが出るまではトレンドが継続しやすいとも見れるので逆張りだけではなく順張りにも応用可能です。
白枠の部分がトレンド発生のサイン。黄色点線のシグナルがマイナスに沈まずにヒストグラムも買い方向に伸びるパターンはダマしの少ない買いサイン。
トレンド系
投資の王道、トレンド系です。
アメリカのジャーナリスト、チャールズ・ヘンリー・ダウが提唱するとても有名な理論、“ダウ理論”でも“トレンドは明確なサインが出るまで続く”と言われています。つまり一度出たトレンドには余程のことがない限り逆らわないほうがいい、ということです。
それほど投資において順張りは絶対的で、リスクの最も小さな取引手法になります。順張りのメリットは相場の大きな方向性に沿った取引なので、含み損を抱える時間が少なくてすむ場合が多いです。逆張りのように短期間で大きな利益を取ることはできませんが、長期保有には最適な投資方法といえます。
このトレンド系もインジケータがいくつか用意されていますが大切なのは“SMA”(単純移動平均線)をキチンと使いこなすことです。SMAのほかにもEMAやWMA、ボリンジャーバンドなど様々な分析方法がありますが基本となっているのはSMAの考え方です。これをしっかり理解すれば取引の本質が理解できます。
SMA(Simple-Moving-Average)
SMAとは一定期間の終値の平均をグラフ化したものです。
トレンドの方向や強さを見ることができます。非常にシンプルな分析方法で多くの人に利用されているメジャーなインジケータです。使用するには多少数値設定が必要ですが慣れれば簡単に使いやすい形にカスタムできるので、人気のインジケータの一つです。
【おすすめの基本設定】
()内はSMAの名称。
・長期の平均値をとる25本SMA (長期足)
・中期の平均をとる15本SMA (中期足)
・短期の平均をとる5本SMA (短期足)
の3本線を出力すると見やすいです。
平均をとるローソク足の本数を多くすればグラフの動きは緩やかになり、反対にローソク足の本数を減らせばグラフの動きは速くなります。ご自身のトレードスパンに合わせて調整するといいでしょう。
実際の使い方
では実際の使い方の例を説明します。条件はチャートは1時間足表記、設定はデフォルトのままです。中期線は考慮していません。
【長期トレンドが強く押し目を見極めたい場合】
ローソク足25本の平均が明らかな上向きの場合、より強い力を持った上昇トレンドであるといえます。この場合、力の弱い5本足の平均が多少下向き転換しても大きなトレンド転換を迎える可能性は低いので、短期足が下落するのを待ってからエントリーすると押し目を上手くとれるようになります。
今のは一例ですがSMAの強みは他のインジケータと組み合わせなくても単体で効果を発揮する点です。複雑な戦略を立てる必要がないので、的確な判断を素早く行うことができ、短期トレードから長期トレードまで幅広く対応します。
インジケータ別手法実践解説
ここからは先ほど紹介したのインジケータを利用してトレードスタイル別に実践解説をします。
ライン分析、オシレータ分析、トレンド分析を組み合わせて実際にどういった手順で戦略を立てていくか参考にしてみてください。
注意、再現性の高い手法を紹介していますが勝率100パーセントを保証するものではありません、あくまで参考例としてとらえてください。
短期トレーダーにおすすめ!ダブルトップ&トレンドブレイク
短期トレードはエントリーからイグジットまでをどれだけ早く行えるかが重要です。そのためには極力含み損を抱えず、エントリーした瞬間から利益を乗せる必要があります。
この手法はダブルトップといわれるレジスタンスラインに2回タッチした後に下落するというチャートパターンに補助線を入れるやり方です。短期トレードの場合、ポジションをとる方向は基本逆張り。長期的にポジションをホールドすると損失が大きくなる場合があるのでパターンから外れた時は即損切をすることが大切です。
【具体例】
チャートはBTC-JPYの5分足
1、ダブルトップを探してレジスタンスライン(青色)を引く。
2、長めのトレンドライン(赤線)を引く。この時なるべく長めのスパンでキレイな上昇トレンドに引くことを意識しましょう。
3、ダブルトップを付けた後に下がり始めたチャートがトレンドラインを割るところでエントリー(黄色丸)
売りポジションでエントリーすると勝率が高いです。仮にトレンドラインを簡単に抜けなければ即損切をすることでリスクを限定します。
短期&中期トレードで安定収益も欲しいならMACD+SMA手法
スキャルピングからデイトレードまで幅広いスタイルで取引したい方はMACDとSMAを組み合わせて使うと有効です。
MACDはオシレータ系インジケータの中でも少し特殊で、中長期トレードでは単体で順張りにも逆張りにも使うことができる便利なインジケータです。ですが短期トレードの場合、MACD単体でシグナル発生から逆張りを行うとダマしに合う確率が高くなります。そこで補助的に中期足のSMAと短期足のSMAを入れて大まかなトレンドを把握すると、短期トレードでMACDの逆張りシグナルの制度が上がります。
中長期でトレードする場合はMACDのシグナルがしっかり確認してからエントリーします。その時SMAからの乖離が大きいと一時的に深押しされることがあるので比較的乖離していない場所を狙ってエントリーしましょう
【具体例】
短期、中期、どちらも買いシグナルが出ている珍しいパターン
BTC-JPYの1時間足
青の縦線が買いシグナル点灯の初動。オレンジ線は25SMA。トレンドが強く出たので中期SMAは非表示です。
一度上昇のあとSMAから乖離して一発目の押し目を付けたところでエントリーが理想(矢印の部分) MACD+SMA手法はラインを使ったトレードと違いこれからどういう形でチャートを形成するかイメージしながらエントリーします。というのも本当は矢印のところで入るのが理想ですが実際エントリーするときは矢印以降のチャートはまだ形成されていません。矢印の場所がエントリーポイントだったいうのはあくまで結果論です。
なのでこの手法を使うときは結果の形をイメージしてエントリーする必要があります。
【予測を立てる手順】
1、MACDシグナルとSMAをそれぞれ確認して、シグナル発生とトレンドから買いか、売りかエントリー方向を決定。
2、過去のチャートパターンから、1で決定したエントリー方向に進むチャートパターンを選び、今後の展開に近いものを当てはめる。
少しややこしいので今回の具体例のチャートを使って手順の説明します。
1、青色垂直線に注目、買いシグナル発生SMA ローソク足がSMAより上に価格を形成、上昇トレンドではと予測する
2、順調に上昇を続け、押し目を付けたが安値を更新せず、SMAの上に価格が乗った(矢印の場所)
3、上昇トレンドの押し目パターンの形成と酷似しているので買いでエントリー
4、このパターンはローソク足がSMAを下割れするまで継続するだろう、下割れしたら損切
といったように順序だてて戦略を組み立てていきます。
長期で安定的に収益化を図るならSMA(マルチタイムフレーム)手法
長期でポジションを持つときにエントリーのタイミングで悩むトレーダーは多いと思います。
それは現在発生しているトレンドがいつまで続くか分からない不安が決断を鈍らせるからではないでしょうか?先程も述べたように大きなトレンドは明確なサインがないと変わらないという特性があります。その明確なサインが出たタイミングで逆方向にポジションを持ってしまった場合は潔く損切するしかありませんが、そう頻繁にサインが出るものでもありません。
であればSMAの長期足を25から更に延ばしてもっと大きなトレンドを確認し、順張りトレードを心がけると不安は解消されるはずです。長期のSMAを設定するときにはマルチタイムフレーム(以下MTF)という拡張インジケータを使うと便利です。
一時間足のチャートにMTFの4時間を描写すると4倍の期間のSMAが自動で表示されるため、複数の時間軸のSMAの描写が一画面で完結します。それぞれの時間軸のチャートを開いて一つずつ設定する必要がありません。またチャートの時間を切り替えてSMAを確認しなくていいため現在の価格が長期トレンドのどのあたりに位置しているか確認することもできます。
下の画像はMTFを描写した4時間足のチャートです。
赤色のトレンドラインを起点として強い上昇トレンドを作っています。
・青が1時間SMA
・黄色が4時間SMA
・白が1日SMA
長期のSMAの方向が揃っていれば1時間の短期SMAが下を向いても大きなトレンド転換が起きていないことが確認できます。これは環境認識を大まかにとらえたいときに使用するのでエントリータイミングを重視しない長期トレード向きの使用方法になります。
【まとめ】仮想通貨のテクニカル分析は難しくない
いかがだったでしょうか?
具体例のチャートパターンは見かけたら鉄板のパターンですが必ずしも同じ値動きをすることはありません。大切なのはこうなるのではないか?と予測を立てて、結果的に鉄板パターンが形成された。という形を目指すことです。そうすればあなたの勝率は劇的に上がるでしょう。
長くなってしまったので最後にもう一度内容を振り返ります。
・過去チャートをもとにデータを使って分析したい人にはテクニカル分析がおすすめ
・テクニカル分析にはライン、オシレータ、トレンド、の3種類のインジケータを使う
・インジケータは単体で有効なものと複数で使うと有効なものがある
この3つを押さえておくと仮想通貨のテクニカル分析の知識はばっちりです。テクニカル分析は短期トレードに特に向いている分析方法になります。デイトレードやスキャルピングを主体に取引したいと思っているトレーダーさんは是非参考にしてみてください。きっと仮想通貨取引が楽しくなります。
執筆者 西村大樹