仮想通貨の納税に関する資料が公開される|財務省が適正な申告をしていない者に言及

財務省は24日に第一回、「納税環境整備に関する専門家会合」において「納税実務等を巡る近年の環境変化への対応について」と題した会議資料を公開しました。

資料において仮想通貨を含めた新しい取引について適正な申告をしていない納税者がいると言及し公平性を図るための仕組みを検討する必要があると指摘しました。

昨年、仮想通貨の投資ブームに国内は沸き、大きな利益を出した方もいました。その一方で申告の仕組みや納税に関してはまだまだ整備されているとは言えません。

今回は財務省が公開した資料について取り上げていきます。

日本仮想通貨交換業協会による資料

24日に財務省が公開した資料には一般社団法人の日本仮想通貨交換業協会による資料もありました。

その中で「申告等の環境整備に関する方針」のページでは年間報告書の提供について触れていました。簡潔にまとめると以下のようになります。

  • 仮想通貨取引に係る申告の利便性向上に向けた方策を協議中
  • 2018年分の確定申告より国税庁は個人の納税者に対して仮想通貨の計算書を提供する予定
  • 仮想通貨交換業者は納税者が仮想通貨の計算書を簡易に作成できるよう年間報告書の提供を行う
  • 各交換業者は上記の対応を各社のホームページにて公表する

間も無く2018年の収支などを計算しなければならない時期ですので、各交換業者がしっかりと対応できるのか、ホームページなどで確認が必要です。

現行の制度では報酬などの支払調書は年間5万円を超える場合に限り当局への提出が義務付けられています。

仮想通貨の納税に関しては仕組みが不十分です。さらに、各交換業者が取引についての複雑で莫大な手続きが必要で申告漏れがあるのでは無いかとの指摘もあります。

税務処理に当たる人員などの面からもインターネット上でのやり取りで行えるようにすれば支払調書の発行の手間も省けるとも一連の資料には記載があります。

最終的には仮想通貨交換業者が売買損益に係る税金の計算から納税を一手に代行してくれるような仕組みが望まれるのではないでしょうか。

現行の確定申告方法について

現行の仮想通貨に関する確定申告は、得た利益は雑所得として扱われます。会社員であれば副業で得た利益と同様の扱いとなるのです。

1月1日から12月31日までに得た雑所得が20万円を超えるようだと、翌年の2月16日から3月15日の期間中に確定申告をしなければなりません。(利益確定した瞬間に課税対象となる)

雑所得は他所で得た給与所得などと合算して総所得を求め、累進課税制度の総合課税が適用されます。端的に言えば所得が増えるほど多くの税金を支払わなっくてはならないのです。

所得額が195万円以下ならば税率は5%、195万円超から330万円以下は10%と段階的に税率が設定され、住民税が一律10%加わります。

雑所得のデメリット

納税者の立場で考えると累進課税自体がデメリットですが、もっと大きなデメリットは控除がなく他の所得と損益通算ができないことです。つまり、翌年に損失を繰越せないのです。

昨年、仮想通貨で3000万円の損失があり、今年は3000万円の収益が上がったとしても課税対象は3000万円となります。

ちなみに、株やFXの場合は確定申告をしておくと損益通算は3年間まで可能です。FXならば日経平均先物取引でマイナスになった分を商品先物取引で相殺するなども可能です。

FXで100万円の損失がでたから給与所得で相殺し、所得額を減らすこともできます。このように損益通算ができないことは仮想通貨の投資家にとってみると非常に大きなデメリットになります。

株やFXの損益を仮想通貨の収益で損益通算はできない

もう一つ覚えておいて欲しいのは株やFXで出した損失を仮想通貨の収益で損益通算はできないことです。

さらに、株とFXの損益通算もできないので注意が必要です。所得区分が株は譲渡所得、FXは雑所得となります。

同じ雑所得ですのでFXと仮想通貨は損益通算ができそうですが、FXは申告分離課税、仮想通貨は総合課税となり性質が異なるので損益通算はできません。

執筆者 西村大樹

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