仮想通貨の確定申告は不要?やり方や注意するポイントを解説

仮想通貨の確定申告

「仮想通貨の取引で得た報酬は確定申告が必要?不要?」
「確定申告のやり方は難しい?」

仮想通貨の売買や取引で得た報酬は、取引内容や額面、その他の条件次第で確定申告が必要なケースがあります。税務署から「あなたは仮想通貨の取引で収益が出たので確定申告が必要ですよ」と連絡がくれば良いのですが、残念ながら自分自身で必要か不要かを判断しなければなりません

ここでは、仮想通貨で得た報酬で確定申告が必要なケース・不要なケース、確定申告すべき取引内容、確定申告のやり方、確定申告を忘れていた・漏れていた場合の対処方法について詳しく解説します。仮想通貨を楽しむために、ぜひお役立てください。

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仮想通貨の確定申告が不要なケース・必要なケース

確定申告書と電卓

仮想通貨で利益を得た場合の、確定申告が不要なケース・必要なケースをご紹介します。

仮想通貨で得た利益とは、その利益を得るためにかかった費用を収益から差し引いた分になります。例えば、投資の勉強をするために購入した書籍やセミナー代、教材費などが該当します。

利益=収益ー費用

仮想通貨で100万円の儲けがあったとして、勉強のために10万円分の書籍やセミナーに参加すると、残りの90万円が利益となります。

確定申告の不要・必要は、大きく分けて5つのグループで判断の仕方が変わります。

  • 給与をもらって働いている人
  • 扶養内かつ給与をもらって働いている人
  • 掛け持ちかつ給与をもらって働いている人
  • 個人事業主やフリーランスとして働いている人
  • 働いていない人

ご自身がどのグループに属するか頭においた上で、確定申告する必要があるか判断していきましょう。

確定申告が不要なケース

  • 給与所得があり、仮想通貨の利益を含む所得合計(給与所得・退職所得は除く)が20万円以下
  • 家族に扶養されている専業主婦・主夫で、仮想通貨で得た利益を含む所得合計が控除額以下(※)
  • 家族に扶養されている学生で、仮想通貨で得た利益を含む所得合計が控除額以下(※)

※年齢や条件によって控除額は異なる

それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。

給与取得あり+20万円以下

会社やお店などに勤めていて給与所得を受け取っている人、つまり、特定の一社で正社員や契約社員、派遣社員、パート社員、アルバイトといった働き方をしている人は、毎年1月1日から12月31日の1年間で仮想通貨で得た利益を含む所得合計(給与所得・退職所得は除く)が20万円以下だった場合、自身での確定申告が不要になります。アルバイトをしている学生も同じです。

なお、アルバイトやパートの掛け持ちなど複数の給与所得がある場合は確定申告が必要です。

専業主婦・主夫+控除額以下

家族の扶養に入っている専業主婦・主夫の場合は、仮想通貨で得た利益を含む所得合計が基礎控除以下であれば確定申告不要となります。専業主婦・主夫の場合は配偶者控除の48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)がラインに、配偶者特別控除が該当する場合は48万円〜133万円以下がラインとなります。

学生+控除額以下

学生の控除については年齢によって控除額が異なり、16歳から18歳までは48万円(令和元年分以前は38万円以下)、19歳から22歳までは63万円まで控除されます。

【共通】扶養内で働いている場合は所得の内訳に注意

扶養から外れないよう年103万円以下でパートやアルバイトとして働いていて、なおかつ仮想通貨で利益を得ている人扶養から外れてしまう可能性があるので注意が必要です。

103万円というのは、給与所得控除額55万円(令和元年分以前は65万円)+基礎控除48万円という内訳になっています。つまり、仮想通貨の利益として満額の48万円の控除を受ける場合、給与として控除できるのは55万円となります。月の給与にしておよそ4万5千円がラインとなります。

【共通】利益が出ていれば住民税の申告は必須

確定申告の義務はないものの、利益の大小にかかわらず住民税の申告は必須ですのでご注意ください。申告は市区町村に対して提出し、住民税が発生する所得額のラインは自治体によって異なります。「確定申告の義務がない=住民税が発生しない」というわけではありません。

確定申告が必要なケース

  • 給与所得を得ていて仮想通貨の利益を含む所得合計(給与所得・退職所得は除く)が20万円を超える
  • 掛け持ちや副業など2箇所以上から給与所得を得ている
  • 給与所得が2,000万円以上ある
  • 仮想通貨の利益を含む所得合計(給与所得・退職所得は除く)が控除額を超える
  • 個人事業主・フリーランス

確定申告が必要なケースは、給与所得があり20万円を超える利益がある人、パートやアルバイトの掛け持ちをしている人、給与所得が2,000万円以上ある人、副業をしている人、控除額を超える利益がある人、個人事業主・フリーランスの人が該当します。個人事業主・フリーランスの場合は仮想通貨で得た利益にかかわらず確定申告が必要です。

確定申告をした場合は、別で住民税の申告を提出する必要はありません。

確定申告が必要な仮想通貨での所得

さまざまな仮想通貨

ここで改めて確定申告が必要な仮想通貨での所得について確認しましょう。

仮想通貨で利益を出す方法は以下のようなケースが考えられます。

  • 現物取引
  • レバレッジ取引
  • レンディング(貸仮想通貨)
  • ステーキング
  • 積立投資
  • 電子ポイントを仮想通貨に交換
  • 仮想通貨での決済

なお、仮想通貨を購入してただ所持しているだけであれば確定申告は不要です。イメージとしては、電子決済やバーコード決済などの口座にお金を入金している状態と同じ状態で、収益が発生しないからです。

それでは1つずつ見ていきましょう。

現物取引

現物取引は仮想通貨のオーソドックスな取引方法で、円やドルといった法定通貨と仮想通貨間での売買で生まれた差額で報酬を狙う方法です。収益が出た場合は買値と売値の差額、そこから手数料を差し引いた額が利益になります。損失分の取り扱いについては後ほど詳しく解説します。

レバレッジ取引

レバレッジ取引は、投資の元手を担保にレバレッジを利かせて、少ない元手で何倍もの報酬を狙う取引方法です。利益の出し方は現物取引と同様です。

レンディング(貸仮想通貨)

レンディングとは、仮想通貨を第三者へ貸し出して利息報酬を得る方法です。利息分が利益となり、確定申告の対象となります。

ステーキング

ステーキングとは、仮想通貨を保有して報酬を得る方法です。ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムにPoS(Proof of Stake)を利用している仮想通貨のみ利用できます。PoSを採用している仮想通貨は、イーサリアム2.0(ETH)やカルダノ(ADA)、ポルカドット(DOT)、IOST、リスク(LSK)といったものが代表的です。金利が利益となります。

積立投資

仮想通貨の積立投資で得た収益も確定申告の対象となり、見落としがちな点です。

銀行や証券会社での投資では、自分で確定申告する一般口座か、銀行・証券会社側で確定申告を行ってくれる特定口座、そもそも確定申告がいらないNISA口座があります。

対して仮想通貨には銀行や証券といった中央で管理する母体がありません。「積立ということは、定期預金みたいにサービス提供元でどうにかしてくれているか」と思わず、自身で確定申告が必要か判断しなければならないのです。

電子ポイントを仮想通貨に交換

忘れがちなのが、電子ポイントを仮想通貨に交換するサービスです。

仮想通貨取引所のbitFlyerには、Tポイントの利用手続きを行うと100ポイントからビットコイン(BTC)に交換できるサービスがあります。0円の状態から100ポイント分のビットコイン(BTC)を得ているため、収益が出たということになります。「元手ゼロで仮想通貨投資を開始できる」と聞こえは良いですが、大量に保有しているTポイントをビットコイン(BTC)に交換した・Tポイントから交換したビットコイン(BTC)で利益が出た、という場合は確定申告の必要があります。

仮想通貨での決済

仮想通貨を使って決済できるサービスが増えてきています。仮想通貨で何かを買う時、仮想通貨と商品がそのまま交換されているわけではなく、仮想通貨を円やドルといった法定通貨に売却して決済が行われています。商品やサービスなどの価格から、仮想通貨を取得した際の価額に売却したコイン数を差し引いたものが所得額となります。

ビットコイン(BTC)で商品を購入するとしましょう。

1BTCが10万円の時にビットコイン(BTC)を購入。1BTCが20万円に上昇したタイミングで20万円の商品を購入すると、差額の10万円が所得額となります。

商品20万円ー仮想通貨購入時の価額10万円×1BTC=所得額10万円

PayPayやd払い、auPayなどの電子決済を利用している人も多いかと思いますが、決済する方法には買い物をするたびにQRコードを読み込んで決済するQRコード決済と、あらかじめチャージした残高から決済するプリペイド決済がありますよね。

仮想通貨の場合、コード決済では決済時の価額で、プリペイド決済ではチャージした時の取得価額で計算することになります。

仮想通貨で得た所得を確定申告するやり方とポイント

確定申告書とスマホ

仮想通貨で得た所得を確定申告するやり方と、抑えておくべきポイントについて説明していきます。

確定申告のやり方は3パターン

確定申告のやり方は3つのパターンがあります。

1つは税務署や特設会場で直接申告する方法、2つ目は税務署へ郵送する方法、3つ目は電子申告する方法(e-Tax)です。電子申告はマイナンバーカード方式とも呼ばれており、マイナンバーカードとそれを読み込むためのICカードリーダーかマイナンバーカード読取対応のスマートフォンが必要となります。

確定申告を自分でしたことがない人は、税務署や特設会場に行って係員の指示に従いながら入力をするか、「確定申告書等作成コーナー」という国税庁のサイトで書類するのが簡単でスムーズです。

確定申告で準備するもの

確定申告で準備するものは状況によって異なりますので、国税庁サイトで確認しておきましょう。

確定申告の期限は2月16日〜3月15日

確定申告は、毎年2月16日〜3月15日と期間が設けられています。15日が土日になった場合は月曜日が最終日となります。令和3年の確定申告は新型コロナウィルスの影響を加味し、4月15日(木)まで延長されました。期限が短くなることはありませんが状況次第で延長される可能性もあります。

確定申告の期限に間に合わなかった時

確定申告の期限に間に合わなかった時でもあきらめないで申告して下さい。

期限から1ヶ月以内に申告した場合や納付期限内に全額納税した場合、過去5年以内に無申告加算税や重課税を課せられた経歴がない場合、期限内に申告する予定だったが何らかの事情で申告できなかった場合は無申告加算税がかかりません。

また、上記に当てはまらない場合は、50万円までは10%、50万円を超えた分に関しては15%の無申告加算税がかかりますが、税務署から指摘が入る前に自己申告すれば税率が5%に軽減されます。

意図的に確定申告しなかった場合は「逋脱(ほだつ)」という罪に該当し、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または、その両方」が課せられます。また、シンプルに確定申告を忘れていた場合も「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が課せられるケースもあります。

期限に間に合わなかった場合でも自己申告しやすいようハードルが低くされていますし、納税に関しても分割の相談が可能です。恐れず申告して下さいね。

所得税の納付期限は3月15日

確定申告後は所得税を納付するのですが、納付期限は確定申告の期限と同じく毎年3月15日が納付期限となっています。また、3月15日までに半分を納付すれば残りの支払いを延ばすことも可能です。

なお、令和3年の確定申告は確定申告の期限が延びたこともあり、4月15日が納付期限となり、分納の期限は5月31日となっていました。

納付期限を超えると延滞税が発生

納付期限内に支払わなかった場合は延滞税が発生します。延滞税は納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの期間(※下記1)と、それ以降の期間(※下記2)で分けて計算が行われます。

  1. 年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を適用
  2. 年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用

令和3年の延滞税特例基準割合は、1が2.5%、2が8.8%でした。

計算方法や比率については変更が入ることがあるので、確定申告時の最新情報を確認してください。

確定申告時の勘定科目

電卓とファイル

確定申告時の勘定科目は、基本的に「雑所得」で扱います。所得には10の区分があり、雑所得以外の所得区分に該当しない所得が雑所得として扱われます。仕分けする際は「事業主借」で問題ありません。

【所得区分】

  1. 給与所得
  2. 不動産所得
  3. 事業所得
  4. 配当所得
  5. 退職所得
  6. 利子所得
  7. 譲渡所得
  8. 山林所得
  9. 一時所得
  10. 雑所得

仮想通貨で得た利益の他にも、FXで得た利益やネットショップでの販売利益、セミナー代などが該当します。

課税方式は総合課税

仮想通貨で得た利益は「総合課税」の対象です。

課税方法には総合課税と分離課税の2種類あり、総合課税とは総合課税対象の所得をトータルした金額に対して課税する方法で、分離課税とはそれぞれの所得に対して定められた税率で課税する方法です。

仮想通貨は損益通算不可

仮想通貨は損益通算ができません。損益通算とは、プラスになった所得をマイナスになっている所得と相殺することです。仮想通貨の収益は雑所得として扱われますが、雑所得は他の区分の所得と相殺できない特徴を持っているからです。

ただし、雑所得同士での損益通算は可能です。例えば、仮想通貨での利益が50万、FXでの損失が40万であれば、相殺されて雑所得は10万円です。この場合、確定申告の義務はありません。

また、損失分を翌年以降に繰り越すこともできませんのでご注意ください。

【まとめ】仮想通貨取引をする際は確定申告も念頭に

安易に始められる仮想通貨の取引ですが、確定申告が必要なケースがあることも念頭に置いておかなければなりません。

他の区分所得との損益通算はできませんが、仮想通貨を得るために支払ったセミナー代や教材費は経費となりますので収益から差し引くことで節税対策が可能です。

毎年確定申告のシーズンになると無料相談会なども各地で開催していますし、確定申告作成書を設けている会場では係員に入力方法を聞くこともできます。個人事業主やフリーランスの場合は準備が大変ですが、給与収入がある場合は入力するだけで完了しますので、漏れのないよう申告しましょう。

執筆者 西村大樹

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