ブロックチェーン技術を用いた転売抑止チケットシステム登場

9月20日、京都に本社を構える株式会社LCNEMはブロックチェーン技術によって転売対策が施されたチケットシステム『ちけっとピアツーピア』を公開した。

LCNEMとは?

LCNEMは2018年3月に起業した新しい会社で、NEMブロックチェーンを利用して発行したステーブルコイン(価格が一定のコイン)による送金システムなど、ブロックチェーンを活用したシステム開発を行っている。CEOを務めるのは京都大学4年生の木村優(きむらゆう)氏で、同氏が運営するブログ『スペックの持ち腐れ』はブロックチェーンの知識補填に役立つとしてTwitterを中心に話題だ。

転売が引き起こしている問題

ここではコンサートやイベントチケットの高額転売による悪影響について記す。

ご存知の方も多いとおり、人気アーティストなどのライブチケットは応募倍率が高い。そのためチケットが定価よりも高額で売られることが多い。近年、度をすぎた法外な値段がつくことも珍しくなく、本来支払うべき金額以上にチケット代が必要になってしまう。

挙句、チケットが購入されなければ、完売のはずなのに会場に空席が目立つなど、主催者もファンもがっかりする事態が発生する。昨年、広島マツダスタジアムで行われたプロ野球、セリーグのクライマックスシリーズ広島vs横浜DeNAがいい例だろう。

また転売対策として顔認証など本人確認の工程が追加されることで、開催側の人件費高騰による利益率の低下、スムーズでない会場のセキュリティなどによるファンの満足度の低下にも繋がり、額面以上の問題が近年取り沙汰されている。

『ちけっとピアツーピア』のシステム

この現状に一石を投じてくれる可能性を秘めているのが『ちけっとピアツーピア』で、システムは次の通りだ。

チケットを購入すると、ブロックチェーン上のアドレスが発行され、このアドレスそのものが、有効なチケットとみなされる。

チケットの認証にはあくまでアドレスが必要なので、秘密鍵は自動的に破棄される。ゆえにもしこのアドレスにアセットを送信した場合は何も取り出せなくなる。

注意点として、アドレスになんらかのトランザクションを受け取った時点で、所持しているアドレスが無効化=チケット機能が失われるという。

このシステムをイベントサイトに適応するには、ticket-p2p.netのダッシュボードにアクセスしイベントを作成、定員を設定。(定員1人/50円+税)

API形式が利用されているとのことで、定員を購入したら自身のサイトにチケット販売機能の埋め込みが可能となる。チケット販売専用サイトへの以降など、消費者に余計な手間がかからない仕組みだ。

ブロックチェーンアドレスのQRコードが自動できに発行されるよう設定されているため、イベント会場への入場もスムーズに行われることが予測される。

さてここからがミソだ。

転売目的にアドレス・QRコードをサイトなど公の場に公開すると、それを見た第3者にトランザクションを実行され、チケットが無効化されるリスクが生じる。

転売サイトからチケットを購入しようとする人(2次購入者)は、そのチケットが有効なのか不明な状態で買うことになります。この状況下での購入は非常にリスキーだ。

さらにちけっとピアツーピアにはチケットを無効化するトランザクションを送るインセンティブ設定が可能だ。

例えば転売者が2次購入者にチケットを売却したのち、転売者が無効化トランザクションを送信=通報すると、転売者は報酬を得ることができる。そして2次購入者に渡ったチケットは使えなくなる。

2次購入者は、定価よりも高額なチケットを購入させられる上、そのチケットが使えなくなるリスクも一緒に買い取ることになるわけだ。

転売者も、チケットを公開すると、自らのチケットを使えなくなるリスクに自ら晒すことになる。

なお転売者だけでなく、2次購入者も通報が可能な設定になっているそうだ。

この通報を記録するためにもブロックチェーンが使われており、いつ・どこから・誰が通報したが改ざん不可能な状態で記録される。

通報への報酬額はイベンターが各々設定することになっているが、報酬が発生する基本的な条件として、転売者は「トランザクションコスト<通報に支払われる報酬」、2次購入者は「トランザクションコスト<通報に支払われる報酬<チケット販売額」とのことだ。

どうしてもチケットを転売したければ、絶対にチケットを公開しないと約束可能な信用のおける関係値(親類や親友など)である必要がある。しかしリスクはチケットを使い切るまで生じていることに変わりはない。

システムの詳細はURL<https://yu-kimura.jp/2018/09/20/ticket-p2p/>から確認できる。

執筆者 西村大樹

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