金融庁が仮想通貨事業の最新状況を公表。ICOなどに建設的な意見も

9月12日金融庁は、日々実施している仮想通貨交換業に関する調査の報告会「仮想通貨交換業等に関する研究会」の第5回目を行い、双方発展の為にも仮想通貨とブロックチェーンは明確に切り離して考えるべき、などの意見が交わされた。

仮想通貨事業の方向性

同研究会で語られた意見の中から、要所を掻い摘んで説明する。

仮想通貨とブロックチェーン

・ブロックチェーン技術の育成のためにも、仮想通貨とブロックチェーンは明確に切り分けて議論を進める必要がある

・仮想通貨やブロッックチェーンは地域通貨のような形で地域の創生に貢献できるポテンシャルを秘めている

・仮想通貨取引はリスクが大きいが、ブロックチェーンはポジティブな側面が大きい、という認識が一般的

今回の議論からブロックチェーンに対する期待が垣間見れる。7月につくば市で行われた『つくば Society 5.0社会実装トライアル支援事業』のオンライン投票にはイーサリアム(ETH)のブロックチェーンが試験的に導入されるなど、ブロックチェーンが世の中に浸透する流れがきている。

世界各国でブロックチェーン技術を用いたテクノロジー開発、そして人材の奪い合いが活発化しており、日本もこれ以上うかうかしていられない事情もあるだろう。

ICOについて

・ICOはリスクマネーの調達手段の一つとして使えるポジティブな可能性も考慮した上で規制を検討すべき

・ICOの果たしている機能に応じたリスク・特性を踏まえて、規制のあり方を検討していく必要がある

・ICO規制強化に伴う国内企業の海外流出は懸念すべきではないか

これまでの行き過ぎたICO規制を問題視する声も徐々に上がり始めている。

規制の流れ

・仮想通貨は、「注意を要するもの」として世界は規制を強める傾向にある。我が国においても、業界の育成よりは、規制に軸足を置いて考える必要がある

・新しくルールをつくることよりも、まずは既存のルールをしっかりと守ってもらうような体制を整えてもらうことが大事

・仮想通貨については、金融商品販売法の対象になっていないが、適用対象にすることが必須ではないか

・自主規制団体には、苦情窓口の設置とその内容分析、対応策を急いでもらう必要がある

運用ルールについてこれまで発展途上といった状態が続いてきたが、後述する新たな自主規制組織の登場によって今後の仮想通貨の取り扱い方が変わって行くものと推測される。

これまでの仮想通貨交換業者への対応

2018年1月28日に発生した、コインチェックによる当時の時価総額で約580億円相当の仮想通貨NEMが流失した事件を受けて、金融庁は仮想通貨交換業に順次、立入検査を実施している。

問題が認められた、みなし仮想通貨交換業者10社と登録業者7社に対し、業務停止命令もしくは業務改善命令が発令された。

最近、仮想通貨事業に参加を表明した企業も査察の対象となっている。8月20日にSBIホールディングスが追加出資を決めた『LastRoots』、8月31日に楽天が株式取得した『みんなのビットコイン』も業務改善命令の対象となっている。

なお現在、同事業に新規参入の意向を示す企業は160社を超えるという。

自主規制のプラットフォーム

8月2日に、金融庁に登録済みの交換業者16社※1は自主規制団体を設立し、金融庁へ認定申請を行った。そして『一般社団法人日本仮想通貨交換業協会』として、利用者の利益保護を目的とした仮想通貨の健全性の保持、および発展を支える組織が立ち上がった。

以下の12の規定に言及し、規則・ガイドラインを明示している。

①仮想通貨関連取引
②仮想通貨の取扱い
③利用者財産の管理
④システム関連規則
⑤AML/CFT関連規則
⑥苦情処理及び紛争解決
⑦営業行為
⑧取引業務
⑨証拠金取引
⑩財務管理
⑪経営倫理・処分
⑫ICOの取扱い

規則の施工時期だが、同協会の認定取得に向けて早期に施工予定とし、具体的な日付の提示は無かった。

まとめ

9月12日、金融庁は最新の仮想通貨規制状況を発表した。
ブロックチェーンやICO関連の建設的な意見が聞かれる一方で、自主規制を強化し、健全な仮想通貨市場になるべく今後も注力して行くとのこと。
また現在、金融庁に認可されている全16の仮想通貨取引事業者が自主規制委員会を立ち上げ、仮想通貨利用の健全化を進めて行く。

金融庁発表の詳細資料はURL<https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180912.html>から確認できる。

※1登録業者16社は以下の通り。(順不同)
・Bitgate
・BITOCEAN
・フィスコ仮想通貨取引所
・Xtheta
・bitFlyer
・QUOINE
・ビットバンク
・テックビューロ
・マネーパートナーズ
・BTCボックス
・ビットポイントジャパン
・SBIバーチャル・カレンシーズ
・ビットトレード
・GMOコイン
・ビットアルゴ取引所東京
・DMM Bitocoin

 
執筆者 西村大樹

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