多くのICOは詐欺。主要仮想通貨のトップが警告!

イーサリアムとリップルのトップがテレビ番組に登場!

私はビットコイン以外の仮想通貨であるアルトコインのニュース記事を毎週作成しており、イーサリアムとリップルという2大アルトコインについて、ほぼ毎日のように調査している。

2017年11月17日、アメリカのテレビニュース番組であるCNBCにイーサリアムの共同創業者であるJoseph Lubin氏とリップルの最高経営責任者(以下、「CEO」)であるBrad Garlinghouse氏が揃って出演していた。

この中で両氏は、ICOについて大いに語っていた。この2人がテレビに同時に出ることは珍しく、またテーマがICOであったため、今回の記事ではこの番組内容について詳しくお伝えしたいと思う。

今回のテレビ番組で、Lubin氏とGarlinghouse氏が語った主な内容をまとめると、以下のようになる。

新しく発行されている仮想通貨の多くは詐欺であり、投資家は注意すべき
ほとんどのICOは既に存在しているプラットフォームを模倣しているだけ
仮想通貨を販売する際の新しい法規制やルールの整備が必要になっている

Lubin氏とGarlinghouse氏は、それぞれイーサリアムとリップルのトップであり、仮想通貨業界において、時価総額第2位と第4位の仮想通貨を率いている人物でもある(2017年11月23日時点)。

そんな2人が揃って現在のICOのやり方に対して否定的な見解を示し、「多くのICOは他のプラットフォームの模倣であり、詐欺が多い」とコメントしていたのは意外だった。

既存の伝統的な金融機関トップが2017年9月に「ビットコインは詐欺」と発言し、仮想通貨全体の価格が下落したことは記憶に新しい。

2017年9月30日にこちらのニュースサイト「bit-life(ビットライフ)」で、JPモルガンCEOの発言などをまとめた記事を掲載しているため、ご参照頂きたい。

高品質なICOはあるが模倣しているものが多い

イーサリアムのLubin氏は、「高品質なICOはあるが、多くが模倣された仕組みであり、単なるコピーであるため、投資家に対して価値を与えていない」とコメントしている。

ほとんどのICO企業が、イーサリアムのスマートコントラクトを利用していることから、ICOに参加する投資家はイーサリアムを用意しなければならないことが多くなっている。

このことから、イーサリアムにとってICO企業は得意先顧客のはずだが、Lubin氏は「ほとんどのICO企業は他のプラットフォームの真似をしているだけ」と手厳しい評価をしている。

中国政府によるICO禁止措置は合理的

今回のCNBCの番組を観ていて興味深かったのは、2017年9月に中国政府が発表した国内におけるICO禁止措置に対して、Lubin氏が理解を示していたことだ。Lubin氏は、以下のようにコメントしている。

「ICOに対する中国政府のアプローチについて、理解できる部分がある。多くの詐欺ICOが中国で横行しており、悪事を働く人たちがたくさんいる状況下では、政府が何らかの措置を取らざるを得なかったのだろう。」

中国政府に続いて、韓国政府も2017年9月にICO禁止措置を発表し、国内の仮想通貨取引所における信用取引(いわゆるレバレッジ取引)の禁止も同時に発表した。

韓国の場合、日本と同様に国レベルで仮想通貨に対する法規制を準備しているとの報道が流れている。

韓国政府によるICO禁止措置は、仮想通貨取引に関する法整備が完了するまでの時限措置との観測も流れているが、実際のところは不明なままである。

今後ICOは止まる時が来る

リップルのCEOであるGarlinghouse氏は、イーサリアムのLubin氏よりも現在のICOの動きに対して懐疑的であり、以下のような辛辣なコメントを残している。

「現在のICO市場で行われていることのほとんどは詐欺行為であり、このようなICOのやり方は遅かれ早かれ止まる時が来ると思う。実際に、多くの投資家が新しい仮想通貨の発行元を訴えている。」

珍しくビジネススーツに身を包み、ネクタイをしていたGarlinghouse氏は、「新しい仮想通貨は、グレーゾーンの中で発行されている」とも述べ、法規制や行政上のルール整備が必要であるとの見解も述べ、以下のようにもコメントした。

「長い目で見れば、ICOに関するグレーゾーンはなくなると考えている。株式や債券などの証券市場は何十年もかけてルールを整備し、投資家と企業を保護する仕組みを構築した。同じことが、仮想通貨の発行についても起こると思う。」

「仮想通貨とブロックチェーン技術によって、無駄をなくし、コストを減らし、これまでにできなかったことができるようになって、たくさんの素晴らしいことが起こっている。これらの前向きな部分に我々は目を向けるべきなのに、グレーゾーンで起こっていることに気を散らされている。」

当局は仮想通貨に協力的

話は若干逸れてしまうが、2017年11月10日に私は取引先の招待で、初めて仮想通貨のイベントに参加した。

その中で、ヨーロッパのICO企業トップと話をする機会があった。その社長は中国人で、もともと中国でICOを行う予定だったが、2017年9月に中国政府がICO禁止措置を行ったため、ヨーロッパで登記を行うことになった。

ただ、その社長によると、「中国政府はブロックチェーン技術の開発には協力的」であるそうだ。

その証拠に、その社長のICO企業の本拠地はヨーロッパに置いてあるが、開発などを行うエンジニアのほとんどは中国にいる中国人であり、このやり方は問題がないのだという。

日本の場合、ICO企業は金融庁に事前に相談に行って、仮想通貨の発行をして問題がないか「お伺い」を立てることが慣習になりつつあるようだ。

仮想通貨取引の準拠法である改正資金決済法にICOに関する記載がなく、仕組みなどに問題がないかを金融庁にあらかじめ確認をし、新しい仮想通貨を発行するという流れができつつあるのである。

日本の金融庁のやり方は世界的に見るとかなり異質であるが、必ずしも悪いというわけではない。

中国や韓国のようにICOを全面禁止されるよりは、日本の金融庁の行政手法の方がまだましである。

ただ、このやり方だと海外のICO企業が日本に本拠地を置いて、新しい仮想通貨を発行することが難しくなる。

最近の金融庁は変わっており、英語でのやり取りができる担当官も出てきているが、基本的には日本語で資料を作り、日本語で交渉を行う必要があるからだ。

海外のICO企業が登記だけ日本で行い、金融庁への事前相談なしにICOを行うと、いきなり検査が入って、重箱の底をつつくような聞き取りが始まるリスクが存在する。

リップルのGarlinghouse氏が述べたように、仮想通貨取引の規制について各国の当局は試行錯誤の状態であり、今後時間をかけてグレーゾーンをなくし、投資家とICO企業の双方にとって望ましい仕組みが構築されることを願いたいものだ。

イーサリアムのLubin氏も述べている通り、「各国の金融当局はブロックチェーン技術によるイノベーションを歓迎している」のである。

今後もこちらのサイト「ビットライフ」で、世界中の金融当局の動きを調査して報告する予定である。

執筆者 西村大樹

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