10月4日、富山県の事業者・投資家を中心に発足したYell TOYAMAプロジェクトは、地域応援通貨『Yell』を軸とした地域経済活性化事業『Yell TOYAMA』を2018年11月に開始すると発表。観光客誘致、地域消費の促進、中小企業の資金調達に活用されるYellにはブロックチェーンが使用される。
Yell TOYAMAの背景
Yell TOYAMAの主眼は富山県に存在する海の幸、立山連峰を望む自然環境、鋳物などの伝統産業など、富山の価値を国内外に発信・流通させ、富山を盛り上げていくことだ。
これまでその価値が伝わりづらかった伝統工芸やそれに付随した”体験”や技術を地域応援通貨『Yell』で表現することで、富山の魅力アップにつなげていく方針だ。
Yellの機能
YellはERC20トークンベースのプライベートチェーンで稼働する円と等価の価値のステーブルコインで、有効期限は6ヶ月に設定された電子マネーだ。
Yellはキャッシュレス決済システムのみならず、決済時に地域を応援するメッセージを一緒に贈る『YOSEGAKI』機能が内包されている。
Yellのウォレットはスマートフォンアプリによって管理され、店頭での買い物以外にも専用の市場やオークション、地域事業者を支援するクラウドファンディング、地域への応援や消費、投資や寄附に利用できるようになるという。
今後の予定としては、2018年11月にウォレットと市場が開設され、優待商品の売買、地域事業者への寄附や募金、行政との連携を開始するそうだ。
2020年には国境を越え、世界中からYell TOYAMAへアクセス可能な環境を展開し、当ビジネスモデルを国内外へ展開していく予定だ。
すでに飛騨では『さるぼぼコイン』が導入済み
富山以外にもブロックチェーンを使った地域活性化の取り組みがなされている。
2017年12月に飛騨信用組合は電子地域通貨『さるぼぼコイン』を、地元住民および観光客に提供を開始した。
利用者は2次元コードで簡単決済が可能で、1コイン=1円でチャージでき、チャージ時には1%分のプレミアムポイントがついてくる。(ポイントの使い道は順次展開予定)
飛騨市内700店舗以上でさるぼぼコインの利用が可能で利用状況も上々とのことで、全国的にも注目の的だ。
また熊本ではプロスポーツ界では初めてのICOを実施、プロバスケットボールチームの熊本 ヴォルターズは『熊本 ヴォルターズコイン』を発行し、クラウドファンディングおよび地域活性化支援システムに活用している。
将来展望
10月2日に発表された安倍内閣の第4次内閣改造において、ブロックチェーン技術の発展を支持する平井卓也氏が科学技術・IT担当大臣として入閣を果たした。
過去に平井卓也大臣は、ICOは自治体の資金調達に適しており、これを応援するとのコメントも出しており、今回のYell TOYAMAの発表はタイムリーなものとなった。
直近の課題して考えられるのは、どの程度の規模の店舗でYellがすぐに使えるようになるのか、またチャージしたYellに残高があり使用期限を迎えてしまった時、Yellが法定通貨に換金できず廃棄となってしまうとしたら少々もったいない話しである。これは飛騨でも起きた議論なので、何らかの対策が施されると思われる。
そしてブロックチェーン開発を担当したSAMURAI Securityは富山けんへの提供を皮切りに、地方経済向けトークンエコノミー・ソリューションの提供開始を発表しており、東京中央依存の脱却に期待がかかる。
執筆者 西村大樹