仮想通貨テザー(USDT)の特徴は?今後の見通しや取引所も解説

仮想通貨テザー(USDT)は、2015年2月にTether Limited社が発行を開始した仮想通貨です。2021年8月現在、市場ランキングは5位に位置し、7月にアメリカ国内でネガティブなニュースが飛び交ったものの、現在も安定した価値を維持し続けています。

この記事では、仮想通貨テザー(USDT)が持つ強みや今後の見通し、テザー(USDT)の取引ができる取引所について詳しく解説していますので、テザー(USDT)の取引や基盤通貨として利用しようと考えている人はぜひ参考にご覧ください。

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仮想通貨テザー(USDT)の特徴3つ

仮想通貨テザー(USDT)はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)とは違った、特殊な特徴を持つ通貨です。結論を言ってしまえば、テザー(USDT)は投資目的で保有する通貨ではなく、米ドルのペッグ通貨であり、ステーブルコインである強みを活かしてさまざまな仮想通貨取引をシンプルにしています。

それでは詳しく見ていきましょう。

特徴①米ドルの価値と連動しているペッグ通貨

ペッグ通貨とは、レートをある特定の水準に連動させて変動する幅を最小限に限定する通貨のことで、テザー(USDT)は法定通貨を担保にしています。テントを地面に固定させるために打つ「ペグ(釘)」で、法定通貨に釘を打って固定するイメージから名付けられています。

テザー(USDT)は米ドルと連動するペッグ通貨で、最も有名なペッグ通貨でもあります。価値をキープするために、テザー(USDT)の発行元であるTether Limited社がすでに発行されているテザー(USDT)と同数の米ドル(USD)を保有しており、1USDTが1USDになるよう固定されています。

米ドルにペッグした仮想通貨は、テザー(USDT)の他にもTrueUSD、Gemini dollar、Paxos Standard、USD Coinがありますが、中でも一番最初に発行されたテザー(USDT)が今もなお圧倒的な人気を持っています。今後は他のペッグ通貨にも分散されていくだろうと予想されていますので、これらの通貨もチェックしておくと良いかもしれません。

特徴②価値が安定している基軸通貨

ペッグ通貨であるテザー(USDT)は、同時にステーブルコインでもありますので、仮想通貨取引の基軸通貨として活用されるのが一般的です。ステーブルコインとは、取引価格が変動しないように設計された仮想通貨のことを指します。

価格が安定しているということは、テザー(USDT)は投資で収益を得るには不向きであることを意味します。

私たちがゲームセンターでコインゲームをする時、円をゲームセンター内で使えるコインへ変換します。そして、変換したコインを元にしてさまざまなゲームを楽しみますよね。テザー(USDT)は言わばコインゲームで使われるコインのような存在で、さまざまな仮想通貨の取引を行うための準備通貨として機能しています。

特徴③カウンターパーティーリスクが高い

テザー(USDT)が価値をキープしているのは、発行元であり価値を管理しているTether Limited社への信頼が非常に重要だということです。Tether Limited社が信頼を失うようなことがあれば、テザー(USDT)への信頼も落ち、価値が下がる可能性を持ち合わせているのです。このようなリスクをカウンターパーティーリスクと言い、ペッグ通貨であるテザー(USDT)は他の仮想通貨を比較してカウンターパーティーリスクが特に高い通貨だと言えます。

2021年7月、Tether Limited社が銀行に虚偽の申告をしたとして捜査対象になっているというニュースが流れました。万が一、Tether Limited社が刑事訴追される事態となれば、アメリカ国内で仮想通貨全体への取り締まりが厳しくなる可能性があるとして今後の動向が注目されています。

このショッキングなニュースに反して市場は大きな反応を見せず、5月の下旬から大きな変動なく横ばいが続いています。

仮想通貨テザー(USDT)の今後の見通し

仮想通貨テザー(USDT)は他の仮想通貨のように、例えばエンターテインメントに特化したり、ブロックチェーンとしての進化を目的としたりといった特徴を持ちません。そのため、何か大きなサービスをローンチするような予定は今のところない模様です。

ただ、基盤通貨としての信頼性や利便性の向上はユーザーにとって重要視すべき部分だと言えるでしょう。

テザー(USDT)は今後、マルチシグやスマートコントラクトの実装を予定しています。これらの実装によりどのような変化が起こるのか、詳しく見ていきましょう。

マルチシグによる安全性の向上

ホワイトペーパーによると、今後テザー(USDT)にマルチシグを実装する予定だと記されています。

【参照】WhitePaper|Tether

マルチシグとは、「マルチシグネチャー(Multi Signature)」の略称で、複数の電子署名を作成して不正利用を防ぐという、セキュリティ技術の一つです。簡単に言えば、複数のパスワードを作成し、さらにその中から数個のみ有効にしておけば、万が一パスワードが漏れたとしてもすべてのパスワードが漏れ出さなければアクセスできないですし、さらに有効化されているパスワードの組み合わせの合致も必要という、複雑なセキュリティ状態が実現するのです。

テザー(USDT)ではマルチシグの実装に向けて準備を進めている段階ですが、パスワードを誰が管理するのか、どのようにマルチシグを実装していくかといった点が現状の課題だということです。

スマートコントラクトによるコスト削減

テザー(USDT)は今後、マルチシグの他にスマートコントラクトの実装も予定しています。

スマートコントラクトとはブロックチェーン上のシステムの一つで、「自動(smart)契約(contract)」を意味します。ある条件を設定しておけば、その条件を満たす時だけ取引が実行される、というプログラムとなっています。スマートコントラクトの概念を発表したニック・サボ(Nick Szabo)氏は、その取引イメージを自動販売機に例えています。

私たちが自動販売機で飲み物を買う時、お金を投入して商品のボタンを押すという条件がトリガーとなって、自動的に取引が実行されます。私たちは自動販売機を信頼して、実際の商品を手にする前にお金を投入していますよね。あらかじめプログラムされた条件に従って取引が実行されるからこそ、人が介入するよりも透明性が高く、安心して取引ができているのです。

また、スマートコントラクトの利点はコストを削減できる点も挙げられます。日本国内にあるすべての自動販売機に一人ずつ販売スタッフがいれば、人件費(仲介手数料)だけでもかなりのコストがかかりますが、無人であるため必要最低限のメンテナンスだけで運用することができるのです。人が仲介しないため取引もスピーディーになり、ヒューマンエラーも防げます。

仮想通貨テザー(USDT)を取り扱っている取引所

日本国内の取引所で法定通貨である円の取引がなければ、仮想通貨そのものの購入ができません。それと同じように、仮想通貨テザー(USDT)は仮想通貨取引の基盤となる通貨ですので、米ドルを取り扱っている、主にアメリカの仮想通貨取引所で多く取引されています。

残念ながら日本国内の仮想通貨取引所では現在取り扱いがありません

【テザー(USDT)を扱う代表的な取引所】

  • Binance(バイナンス/マルタ島が拠点)
  • Poloniex(ポロニエックス/米サンフランシスコが拠点)
  • Bittrex(ビットレックス/米シアトルが拠点)

上記のような取引所であればテザー(USDT)の取引が可能ですが、取引所として日本国内で認可を得ていません(日本では平成29年4月1日に施行された改正資金決済法により、暗号資産登録業者として金融庁の許可が必要となりました)。

ただし、口座開設は自由で、口座開設や取引をしたからといって罰則はありませんので、自己責任ですが、日本国内でもテザー(USDT)の取引は可能となっています。

【まとめ】仮想通貨テザー(USDT)は動向次第で取引もあり

テザー(USDT)は仮想通貨であるにもかかわらず、Tether Limited社が銀行のように中央で管理をしなければいけない通貨ですので、Tether Limited社の動き次第では現金へ変換しておくべきタイミングも将来的に見据えておく必要があるでしょう。

日本国内で取り扱いのない仮想通貨を取引する際、テザー(USDT)は大変便利な基盤通貨ではありますが、日本国内で取引している投資家にとってテザー(USDT)を保有する旨味はそれほど多くないかもしれません。ただ、ペッグ通貨であることから決済手段として大きな役割を果たすのではないかと期待も寄せられています。テザー(USDT)ほどの規模はありませんが、ユーロと連動したユーロ・テザー (EURT)も発行されていますので、日本国内でも今後広がりを見せる可能性が十分あり得ます。

テザー(USDT)だけでなくステーブルコインは他の仮想通貨と比べて透明性が欠けるため、特にアメリカ国内では当局から厳しい目で見られるようになりました。Tether Limited社が米司法省から訴訟されるのか、どのような罰則を受けるのかが気になるところですが、過去にTether Limited社では管理しているウォレットをハッキングされて約35億円分が持ち出された事件があり、その後の迅速な対応によってすぐに価値を回復させた経緯があります。

テザー(USDT)そのものが破綻する可能性は極めて低いですが、アメリカ国内の仮想通貨の動きには要チェックだと言えるでしょう。

【参考】Tether公式サイト

執筆者 西村大樹