ネム(NEM/XEM)から大型アップデートによりスタートしたシンボル(XYM)ですが、今後はビジネスシーンや公的機関などのプロジェクトで活躍することが予想されます。いち企業・いち個人でICO設計ができるなど、管理組織を介さずにさまざまな運営ができる魅力も持ち合わせております。
この記事では、シンボル(XYM)の今後の動きや仮想通貨の価格上昇予測をはじめ、ネム(NEM/XEM)から継続した機能や追加・改善された機能についても解説しています。シンボル(XYM)の仮想通貨取引を検討している方は、ぜひ参考にお読みください。
目次
シンボル(XYM)のリアルタイムチャート
シンボル(XYM)の成り立ち
シンボル(XYM)とは、2021年3月17日にネム(NEM/XEM)の大型アップデートとして開発されたブロックチェーンです。「シンボル」はプラットフォームの名前、「XYM」は内部通貨で「ジム」と読みます。
「XYM」は、取引時に発生する手数料や承認作業をした人への報酬として支払われ、最大発行量は約90XYMに設定されています。
ご存知の方も多いかと思いますが、ネム(NEM/XEM)は2018年に仮想通貨取引所のコインチェックからハッキングにより580億円相当ものネム(NEM/XEM)が流出したことがあります。2021年になり、不正な取引に応じたと見られる31人が摘発され、数名がすでに逮捕されています。
今回の流出はコインチェック側のセキュリティの甘さが招いたとは言え、このような大規模流出があったにもかかわらずネム(NEM/XEM)とシンボル(XYM)には多くのファンがいることから、魅力のある仮想通貨だと言えるでしょう。
ネム(NEM/XEM)は開発者向けに開発されていたのに対し、シンボル(XYM)は企業や公的機関向けに活用できるようにと開発されました。実際に日本でもシンボル(XYM)のブロックチェーン技術はすでに活用されており、身近なところで私たちの生活を支えてくれているのです。これに伴い、ネム(NEM/XEM)パブリックブロックチェーンから、シンボル(XYM)ではパブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンのハイブリッド・ブロックチェーンに変更がありました。後ほど詳しく解説します。
ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へのオプトインとは?
オプトインとは、簡単に言うとネム(NEM/XEM)の保有者が「今後はシンボル(XYM)を受け取ります」と意思表明し、手続きすることです。これは、ネム(NEM/XEM)を保有していれば自動的にシンボル(XYM)へ移行されないことを意味します。
シンボル(XYM)からネム(NEM/XEM)への大型アップデートが実施された2021年3月より前の、2020年9月より事前手続きが開始され、6年後の2027年までにオプトインしなければシンボル(XYM)が付与される権利を消失してしまうのです。ですので、ネム(NEM/XEM)保有者はオプトイン必須だと考えてください。
ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へ通貨を移行させる時の保有量は、スナップショット時が採用されます。スナップショットとは、ある特定の時刻における保有残高を記録する作業のことで、スナップショットが実施されるタイミングでXEMを保通していなければオプトインすることができません。オプトインとスナップショットは別タイミングだということを知っておきましょう。移行は「1XEM=1XYM」で実施されます。
また、取引所によっては取引所サイドでオプトインを実施する場合もありますので、利用している取引所での取り扱いについてチェックしておく必要があります。
大型アップデートした理由は処理速度向上とセキュリティ強化
なぜここまで大掛かりなアップデートに踏み込んだのでしょうか。理由は、「処理速度の向上」と「セキュリティの強化」です。
まず、ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へのアップデートにより、1秒間で最大4,000件処理できる速度を得ました。処理速度の向上にチャレンジできたのは、プライベートブロックチェーンならではです。
また、そもそもネム(NEM/XEM)は仮想通貨の中でもトップレベルのセキュリティの高さを持っていました。大型アップデートでは公的機関での拡大を視野に入れていたため、さらなるセキュリティの強化を実施。日本国内の自治体で利用されていますし、アラブ首長国連邦やマレーシア政府など国家機関とも連携を果たしています。
ちなみに当初はシンボル(XYM)ではなく、投石機や射出機といった意味を持つ「カタパルト」という名称になる予定でした。しかし、カタパルトという単語が商標登録できないと判明し、シンボル(XYM)への変更が可決された経緯を持ちます。
ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へのアップデートで継続した機能
ここからは、ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)への大型アップデートに伴う具体的な部分について解説していきます。まずは、ネム(NEM/XEM)から継続した機能についてご紹介します。
モザイクとネームスペース
「モザイク」とは、プラットフォーム「ネム」のブロックチェーン上だけで機能する独自トークンのことです。ビットコイン(BTC)にも同じような機能がありますが、ビットコイン(BTC)ではこれをカウンターパーティと呼んでいます。そして、「ネームスペース」とは「モザイク」を機能させるために必要な場所のことです。モザイクが建物で、ネームスペースが土地といった表現に例えられることが多いです。
この「モザイク」と「ネームスペース」はシンボル(XYM)へのアップデート後も継続されましたが、いくつか細かなアップデートは実施されました。
【アップデート前】
- ネームスペースのレンタルが必要
- ネームスペースとモザイクのレンタル期限が1年限定
【アップデート後】
- ネームスペースのレンタルが不要
- ネームスペースのレンタル期限が365日以内で自由に設定可
- モザイクの期限を撤廃
アポスティーユ(公証機能)
アポスティーユとは、ブロックチェーンを利用した公証機能のことです。改ざんを抑止したり、権利の譲渡を安全に執り行うための機能で、ブロックチェーン上で作成した文章をアップデートした時に秘密鍵が発行され、署名と日付が押される仕組みになっています。
ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へのアップデートでも引き続きこの機能は継続しつつ、さらに保有者の負担を軽減する改善が実施されました。
個人でのICO設計
ネム(NEM/XEM)は個人でICOを作成できるよう設計されています。ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、「新規通貨公開」を意味します。資金を集めたい企業や団体などが独自で仮想通貨を発行・販売することで資金調達する一連の流れを言います。
現実世界に置き換えると、これまで企業が資金調達をする際は、株式を発行して株式の新規上場を実施する必要がありました。しかし、上場するためには数々の審査をクリアする必要があり、さらに費用もかかります。「資金調達をするための資金がない」というスタートアップ企業や団体で話題になったのがクラウドファンディングです。クラウドファンディングは、透明性の高い資金調達を可能にしました。
これと同じ概念が「ICO」です。ネム(NEM/XEM)を利用したICOを実施する企業や団体、個人が増えることでネム(NEM/XEM)自体の価値も上昇することが見込まれます。
この「ICO」もネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へ引き継いだ機能の一つです。
ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へのアップデートで変化した機能
次に、ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)への大型アップデートで大きな変化を遂げた機能について詳しく見ていきましょう。
「ハイブリッド・ブロックチェーン」でセキュリティとスピードを改善
今回の大型アップデートの大きな要素となったのが、パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンを組み合わせた「ハイブリッド・ブロックチェーン」の採用です。
まず、パブリックとプライベートの違いについて解説します。パブリックブロックチェーンは、管理者が不在で誰でも参加でき、取引がすべて公開されるという特徴を持ちます。ノード数(取引に参加するコンピューター端末の数)が多いため、スピードが遅いというデメリットを持ちます。
パブリックブロックチェーンの特徴
【メリット】
- 管理者が不在
- 誰でも参加できる
- 取引がすべて公開される
【デメリット】
- スピードが遅い
一方プライベートブロックチェーンは、管理者が存在し、組織に所属するなど参加条件が設定されています。参加しているノード数が特定できることで多数決の合意がとりやすく、閉鎖的な空間のためスピードが速いといった特徴があります。しかし、コストがかかり、セキュリティ面でもパブリックブロックチェーンに劣るというデメリットがあります。
プライベートブロックチェーンの特徴
【メリット】
- 管理者が存在
- 参加条件をクリアした人のみ参加できる
- スピードが速い
【デメリット】
- コストがかかりやすい
- セキュリティがやや劣る
シンボル(XYM)では、パブリックとプライベートの両方を組み合わせた「ハイブリッド・ブロックチェーン」を採用しました。企業とユーザー間などの開けた場所で使用する時はパブリックブロックチェーンを、企業や団体などの限られた組織の中だけで使用する場合はプライベートブロックチェーンと、使い分けられるようになったのです。これにより、セキュリティの強化とスピードの向上が実現しました。
利便性の高いマルチレベルマルチシグ
「マルチシグ」とは、複数の秘密鍵で署名がされなければ仮想通貨の取引が承認できないセキュリティ技術の方法です。ネム(NEM/XEM)にはもともと「マルチシグ」が使われていましたが、シンボル(XYM)への大型アップデートで「マルチレベルマルチシグ」へと大幅変更が入り、さらにセキュリティが強化されました。
ネム(NEM/XEM)のマルチシグは1階層のみの対応でしたが、シンボル(XYM)へのアップデートで最大3段階のマルチシグに対応できるようになったのです。
聞き慣れない言葉の数々ですが、実は私たちの生活に深く根付いています。私たちがネットで買い物をすると、商品が今どこの段階にいるのかを追えるようになりました。これは、商品が各ポイントを通過する度に担当者が署名登録を行い、1つずつの認証を通過しないと次の工程へ進めないという仕組みになっているのです。商品が消費者へ届くまでの一連の流れをサプライチェーンと呼ぶのですが、シンボル(XYM)の「マルチレベルマルチシグ」は、このサプライチェーンに応用できる他、複雑なプロジェクトの進行などでも活用が期待できるようになりました。
アグリゲートトランザクションで可能性が拡大
「アグリゲートトランザクション」とは、複数の取引処理を第三者の介入なく同時に実行することができる機能のことです。
例えば企業から複数の顧客に対して商品引換券を配布する場合、一人ひとりに処理するのは手間も労力もかかります。「アグリゲートトランザクション」を利用すれば、顧客への配布を1つの処理として取引することができるため、手間や労力が軽減されるだけでなく、全ての顧客がタイムラグなく受け取れるようになります。
この他にも、トークンや手数料の代払いなど、1つの取引におけるさまざまなやりとりを包括する機能が実現しました。
PoS+でガチホ向きに
ネム(NEM/XEM)からシンボル(XYM)へのアップデートで、コンセンサスアルゴリズム(ブロックチェーンがブロックを追加する時の合意方法)が「PoI(Proof of Importance)」から「PoS+(Proof of Stake +)」へ変更されました。
ネム(NEM/XEM)で採用されていた「PoI」は、通過をどれだけ利用したかといった活動量を重視した仕組みになっていたのですが、PoS+は保有量と保有している時間の多さが重視されます。
これにより、シンボル(XYM)は長期保有で報酬が得やすくなったと言えるでしょう。
クロスチェーンスワップ
「クロスチェーンスワップ」とは、第三者が介入することなく、異なるブロックチェーン同士でトークンのやり取りができるという技術です。仮想通貨を交換する時は間に交換業者を挟むのが一般的ですが、クロスチェーンスワップの採用により、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など他の仮想通貨とのやり取りがスムーズになりました。通訳者がいなくてもコミュニケーションが取れるようになった、というイメージです。
シンボル(XYM)にはプライベートブロックチェーンとパブリックブロックチェーンがありますので、この間のやりとりもスムーズに行えます。
さらに、シンボル(XYM)ではモザイク機能によってトークンの発行と流通が可能です。モザイク機能とクロスチェーンスワップ技術を駆使することで市場拡大の可能性が広がり、さまざまなプロジェクトに役立つと期待できるでしょう。
モザイク制限
ネム(NEM/XEM)・シンボル(XYM)のモザイク機能は基本的に誰とでもやり取りができるのですが、自由度が高いと心配なのがセキュリティ面です。そこで、シンボル(XYM)へのアップデートに伴って、取引に制限をかける「モザイク機能」を採用しました。これによってモザイクの発行者自身で任意の設定をかけられるようになり、より安全性が高まったのです。
プラットフォーム「シンボル(XYM)」今後の見通し
シンボル(XYM)のプラットフォームとしての今後の見通しをご紹介します。大きな動きとしては、「DeFi市場への参入」と「NFT市場への参入」を予定していることがあげられるでしょう。
DeFi市場への参入を予定
DeFi(Decentralized Finance/ディーファイ)とは、分散金融や分散型金融などと訳され、過去には「オープンファイナンス」と呼ばれていたこともあります。
本来、何かをクレジットカードで購入する際は取引を管理する金融機関が間に入り、取引を記録したり、取引を中断・停止することもあります。DeFiの存在は、銀行などの金融機関が膨大なコストを費やして管理していることを、省コストかつスピーディーにできる技術として注目されています。
シンボル(XYM)では、アップデートに伴って「FANTOM Foundation」とパートナーシップを締結しました。
FANTOM Foundationとは
FANTOM Foundationは、安全かつ迅速な取引環境とサプライチェーンの透明化、そしてゼロに近い取引コスト実現の為に、㈱食神などの韓国の大手フードテック企業90社が参加し、公正かつ透明な流通市場作りの実現の為に結成された財団になります。
成長の著しさが目立つ反面、詐欺などの手口と使用されるケースも見られているため、セキュリティ面の強化が課題となっています。
NFT市場への参入を予定
NFT(Non-Fungible Token/非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を活用することでコピーされやすいデジタルデータに対して資産的価値を付与する仕組みです。シンボル(XYM)でもNFT市場への本格参入を目指し、NFTを自由に売買できる分散型プラットフォーム「NEMBEAR ART」のメインネット版を2021年6月にローンチしました。同年4月には既にテストネット版の稼働が実施されていました。
NFT市場は2021年以降、多くの投資家が注目している分野です。デジタルアートやゲームアイテム、スポーツ業界などでも活躍が期待できるでしょう。
仮想通貨「シンボル(XYM)」今後の価格予測
最後に、シンボル(XYM)の仮想通貨としての価格予測を見ていきましょう。
ネム(NEM/XEM)の動向で価格上昇が予測
シンボル(XYM)の市場が拡大するとネム(NEM/XEM)の存在感が低下する可能性があることから、逆に見るとネム(NEM/XEM)に下落の傾向が見られるとシンボル(XYM)の価格は反比例して上昇するという見方があります。
一方、シンボル(XYM)の市場価値が上がればネム(NEM/XEM)の価値も上がるという見方もできます。
両者は矛盾する見方のように見えますが、シンボル(XYM)とネム(NEM/XEM)はお互いが影響し合うという共通点があります。シンボル(XYM)を保有するのであれば、ネム(NEM/XEM)の動向もチェックしておく必要があるでしょう。
国名W杯での価格上昇を予測
2022年に中東カタールで予定されている「カタールFIFAワールドカップ」開催に伴う、現地ホテル建設プロジェクト管理でシンボル(XYM)が利用されます。
AIとシンボル(XYM)のブロックチェーン技術を活用した土木・インフラ管理を行うグローバル建設企業のBimtrazer社とカタールの建設企業が各所を締結し、プロジェクトはBimtrazer社のコントロール管理プラットフォームBIMで進行されます。
BIMを利用することで、改ざんができない建設工程が可能になり、進捗の追跡も可能になります。今回のプロジェクトは、ブロックチェーン技術を用いるだけでなく、人口知能をも取り入れる大型プロジェクトとして注目を浴びています。
このプロジェクトでシンボル(XYM)の知名度が上がれば、価格上昇も期待できるでしょう。
決済サービスや技術参入での価格上昇を予測
シンボル(XYM)への大型アップデートにより処理速度がアップし、決済サービスの市場拡大も視野に入りました。決済サービスの拡大の先駆けとなったビットコイン(BTC)も、歳月をかけて価格を上昇させてきた経緯があるように、決済サービスの市場拡大は価格に影響すると言えるでしょう。
日本国内でも持続可能な観光産業を目的として、岩手県・湯川温泉の宿泊施設「山人-yamado-」では、シンボル(XYM)を利用した宿泊券の発行と、ジム(XYM)決済への対応がスタートしています。アフターコロナに向け、デジタルトランスフォーメーションの促進が狙いとされています。現在はすでに新規受付を終了していますが、『暗号通貨「Symbol」で宿泊券が買える!キャンペーン』が実施されていました。
お申込み可能期間:2021年5月15日~2021年6月15日
販売宿泊券:ペア宿泊券(66,000円相当~)、一人旅宿泊券(49,500円相当~)
利用可能日:平日限定(ペア宿泊券の場合は追加料金で土曜日の利用も可能)
有効期間:宿泊券のお申込み時点から約2,102,400ブロック(約2年間)
仮想通貨に関する詐欺事件などが多く、まだ日本国内では保有する人が少ない現状がありますが、実績や信頼が積み上がることで有効な事業連携の基盤になることを見越しての採用とのことです。同社では、ゆくゆく福利厚生と一貫としてシンボル(XYM)での社内通貨の発行も予定されています。
【まとめ】仮想通貨・シンボル(XYM)の今後は期待大
2021年3月に大型アップデートしたばかりのシンボル(XYM)は、今後ビジネスシーンや公的機関での利用によってさらに信頼が上昇する見込みがあります。
現在国内では12円前後で取引されており(2021年7月現在)、今後の価格上昇に期待できる仮想通貨の1つと言えるでしょう。
執筆者 西村大樹